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文化
舞妓さんと遊ぶ、おいくら? 京都人が隠しておきたい「おねだん」
千年の都の不思議

大阪のおねだん・京都のおねだん

このたび『京都のおねだん』(講談社現代新書)というエッセイ本を上梓した。「大阪生まれのくせに」、「京都に住んで20年の見習いのくせに」とボコボコに怒られる前に、言い訳をば。

僕らが小さい頃はまだ「大阪のおねだん」文化があった。

家電商品の派手な値札を指差して、「これいくらにしてくれますのん」と聞くと、店員は「頑張って勉強させてもらいま」とかよく分からないことを言いながら電卓を叩き、安いおねだんを提示する。そんなセレモニーを2回ぐらい繰り返したものだった。

豚の切り落としも100グラム120円のところ、「男前は100円にしといたるわ」とまけてくれた。そんなわけで、僕は生涯で、小さい頃住んでいた大阪の団地の近所の肉屋にしか男前と言われたことがない。

ある意味分かりやすい「大阪のおねだん」文化は、商品がバーコードで管理されるようになってから廃れたが、もっと分かりにくい「京都のおねだん」はまだ生きている。

もっとも近年では京都のおねだんも分かりやすくなった。僕らの学生時代は舞妓や芸妓のいる花街の一つである先斗町には外から値段の分かる飲食店はほぼなかったけど、今では親切なことにだいたいが観光客向けに価格表を掲げている。

先斗町(Photo by gettyimages)

しかし、そんなレヴェルではなく、京都ではなぜあれがあんなに高く、それがそんなに安く、そもそもなぜあんなものにおねだんがついているのか、という局面に出くわす。

例えば、お地蔵さんの「お貸し出し」が3000円と言われても、京都以外の人にはなにに使うのかも分からないだろうが、その需要が京都の地域コミュニティを支える。

経済システムの話になると、京都の土地は公示地価と実勢価格とにとりわけ大きな差があり(実勢価格が公示地価の3〜4倍)、そのことが巡り巡って洛中にいまだ生息する「旦那」の生態を支えているというメカニズムを知ったときには驚いた。

公家やサムライなど絶滅危惧種のおねだんに、「抹茶パフェの発明者による第1号パフェ」といったいかにも京都にしかないおねだん。そして、誰もが気になる、「舞妓さんと遊ぶおねだん」を知るために、莫大な経費を使った。印税でまかなえることを祈っている。

こんな風に、京都に暮らす間に出会った、おねだんにまつわる素朴な疑問や楽しい驚きを書き留めた一冊だ。

書くうちに、京都のおねだんとはあらかじめ用意されたモノのおねだんではなく、人と人との関係でその都度変わるおねだんだということも分かって、そもそも〈おねだん〉とは何かと考えさせられた。