防衛・安全保障 韓国

韓国「親北派」大統領誕生は、日本にとって最大級の危機である

THAADも対北政策も白紙になれば…
長谷川 幸洋 プロフィール

筋金入りの親北派

韓国の朴槿恵大統領が憲法裁判所に罷免され、失職した。韓国は5月9日に大統領選を行い、新しい大統領を選ぶ。有力視されているのは親・北朝鮮派の野党候補だ。日本にとって「韓国の左傾化」は国の安全保障に直結する一大事である。

憲法裁は、朴大統領が友人である崔順実被告の利権を守るために職権を乱用したうえ、同被告の国政介入を許すなど憲法を法律に違反した、と断罪した。だが、一連の罷免手続きはかなり乱暴だったようだ。

東京基督教大学の西岡力教授によれば、そもそも国会の弾劾訴追手続き自体が事実認定と法理検討の両面で不十分なものだった、という(産経新聞・正論、http://www.sankei.com/column/news/170314/clm1703140006-n1.html)。にもかかわらず、憲法裁は訴追手続き問題は検討せず、大統領の職権乱用を憲法違反とした。

韓国では世論が政治に大きな影響を及ぼす。朴大統領の弾劾を求めた数十万の市民がろうそくを手に街頭に繰り出し、ソウル市内を埋め尽くした光景は記憶に新しい。

その後、大統領支持派も対抗して太極旗を掲げてデモを繰り広げたが、ろうそくデモが広がった段階で「勝負あった」のかもしれない。デモには、日本からも多数の在日韓国人らが飛行機で駆けつけたという。

もはや朴大統領の失権は取り消せない。問題はこの後、韓国がどうなるか。そして日本にどんな影響が及ぶのか、だ。

各紙によれば、次の大統領には最大野党の「共に民主党」元代表の文在寅(ムン・ジェイン)候補が最有力とされる。

文在寅氏〔PHOTO〕gettyimages

支持率は35%前後に達し、2位以下を大きく引き離している。そんな文候補とは、いったいどんな人物なのか。

文氏は朴大統領の父親である朴正煕政権に反対する民主化運動で政治に関わった。この運動で逮捕、投獄されている。釈放され兵役に就いた後、大学に戻り、司法試験に合格して弁護士になった。学業は優秀だったのだろう。

2003年の盧泰愚政権発足とともに政権入りし、政権が進めた対北宥和政策では首相側近ナンバー1の大統領秘書室長として政策全体を取り仕切った。国連の北朝鮮人権決議案をめぐっては、文氏が北朝鮮と事前協議したうえ、韓国の棄権を根回ししたという。この一件をみても、北朝鮮と密接な関係であると分かる。

西岡氏によれば、最近でも「大統領に就任したら、まず平壌を訪問する、と公言している」という。ようするに筋金入りの元闘士であり、親北派なのだ。

 

日本についてはどうか。2015年12月の慰安婦問題に関する日韓合意の見直しを唱えている。

文氏が釜山の日本総領事館前に建てられた新たな慰安婦像を前に跪く写真もある。これでは、合意に盛り込まれた日本大使館前の慰安婦像撤去どころではない。つまり対日強硬派でもある。

そんな文大統領が誕生すれば、どうなるか。

文政権の韓国は朴・前大統領の下で緒についたばかりだった日米韓による「対中国・対北朝鮮包囲網」から脱落する公算が高い。

たとえば、THAAD(超高高度防衛ミサイル)配備について、文氏は「韓国は米国にノーと言うことを習わなければならない」と発言している。文大統領の下で「新たな対北宥和政策」が始まるのは確実だろう。

それは北朝鮮にとってはもちろん、中国にとっても都合がいい。中国にとって、THAADミサイルの韓国配備阻止は絶対不可欠である。米国も韓国も「THAAD配備は北朝鮮の脅威に対抗する狙い」と言っているが、それはもちろん建前にすぎないからだ。

THAADは北朝鮮だけでなく、軍事大国化を進める中国を牽制する役割も担っている。結局、文氏が韓国の実権を握れば、韓国は再び中国と北朝鮮に傾いていくだろう。これこそが日本にとって大変な事態なのだ。

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