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メディア・マスコミ
「ベッキー不倫」スクープがジャーナリズム賞の大賞に選ばれるって…
お手本とすべきは他にあるのでは?

芸能ネタで世の中は良くならない

芸能人の不倫スクープはお手本とすべきジャーナリズムなのだろうか?

少なくとも、報道界に身を置く多くの現役編集者は「お手本とすべき」と考えているようだ。

「ベッキー不倫報道」が2016年「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」(第23回)の大賞に選ばれた。出版社や新聞社の編集者100人による投票を集計したところ、タレントのベッキーさんとミュージシャンの川谷絵音さんの不倫を暴いた週刊文春のスクープが最も多くの票を獲得したのである。

確かに、あのスクープまでには大変な労力を伴ったことだろう。文春の新谷学編集長はその舞台裏を生々しく振り返っている(http://diamond.jp/articles/-/121324)。「ベッキー不倫報道」は世間的に大きな注目を集め、文春にしてみれば販売部数拡大という点で商業的にも大成功だったに違いない。

しかし、商業的に大成功したからといって、それが「パブリックサービス」であるとは限らない。

パブリックサービスとは「公益に資する報道」のことだ。世界で最も栄誉あるジャーナリズム賞である米ピュリツァー賞の大賞は「パブリックサービス賞」だ。ここで芸能ネタが受賞したことは100年の歴史の中で一度もない。芸能人の不倫スクープがピュリツァー賞受賞となったら同賞の信用失墜は必至だろう。

理由は簡単だ。芸能ネタをスクープしたところで世の中が良くなるわけではないからだ。

何かが変わるとすれば、スクープしたメディアの売り上げ増だ。だとすれば、芸能ネタでスクープを放つのはマスコミ業界内だけで通用する内輪の論理であり、「民主主義の一翼を担うジャーナリズム」といった議論とは無関係だ。

過去に2度「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」を受賞するなど、調査報道で多数の受賞実績があるジャーナリストの清水潔氏は「みんなのためになるというネタを選び、掘り下げて取材する」を信条にしている。

表現は多少違っても「みんなのためになるネタ=公益に資する報道」と見なしていいだろう。

 

「ブランジェリーナ不倫」との違い

ここで思い出すのは、最近離婚を発表して話題になっている映画俳優ブラッド・ピットさんとアンジェリーナ・ジョリーさんの2人。

「ハリウッドで最も有名なカップル」とも言われ、「ブランジェリーナ」の愛称でも知られていた2人だが、もともとは不倫関係にあった。その意味では「ベッキー不倫」と構図は同じだ。

ただし、2004~05年に2人の不倫疑惑に絡んでスクープを放ったメディアは何のジャーナリズム賞も受賞していない。そもそもどのメディアだったのか誰も覚えていない(一部スクープは娯楽誌ピープル)。

「ベッキー不倫」とはもう一つ違いがある。メディア上では2人に対し「不倫したのだから反省して仕事を自粛しろ」といった大合唱は起きなかったのだ。