医療・健康・食

末期がんになってわかった「食事療法」の希望と大いなる困難

働き盛りのがん闘病記(7)
朱郷 慶彦 プロフィール

立ち上がったもう一人の西洋医

その他の項目でいえば、ゲルソン療法と星野式ゲルソン療法ではそれほど差はないように見える。

塩を使わない食事は、正直きつい。「死ぬよりましでしょ!」と言われれば、その通りなのだが、そのセリフは済生会中央病院や慶應病院ですでに女医さんたちから散々言われてきたのでどうも心に響かないのである。やさしくないのである。

玄米と海藻とキノコを食べてりゃいいんだろうが、それだけでは、やはり味気ない。豆はどうよ? 日本人だったら、豆腐も食べたいじゃないの。

実は、ゲルソン療法では大豆は禁止なのである。大豆の発芽力は強く、その発芽力のエネルギーががん細胞の成長を促してしまう危険性があるというのだ。

べらぼうめ!こちとら江戸っ子だ。伊達に神田の水で産湯を……あっ、それはもういいか。

とにかく大豆を食わなきゃ、日本料理は全滅も同じだ。禅宗の坊さんだって、肉は食べられなくても、豆腐は食べているはずだ。油揚げだって食べているだろう。

元々、大豆を食べてなかったドイツ人には分からないのだ。

民衆の手に大豆を! 諸君、武器を手に取り、権利を主張しようではないか。「我に大豆を与えよ!」と。

マリー・アントワネットは我々を見てこう呟くであろう。「豆腐がないのだったら、ステーキを食べればよろしいのに」

こらぁ、ギロチンにかけるぞ!

燎原の火の如く革命の炎が燃え広がる直前、ここにもう一人の日本人が立ち上がった。

済陽高穂(わたよう・たかほ)医師である。(革命うんぬんは、私の妄想であるが)

済陽と書いて「わたよう」と読む。「出発」と書いて「たびだち」と読むが如し。違うか。

済陽医師は、消化器の外科医として星野式ゲルソン療法に効果を認め、自分のがん治療に採り入れたという、西洋医としては極めて珍しい医師である。

そして、自身の研究成果も加え、星野式ゲルソン療法にさらに各種食事療法のエッセンスを独自の解釈とともに加えて改良した「済陽式食事療法」を編み出した。

 

済陽式食事療法の特徴は下記の通りである。

1)調味料の塩分はほぼゼロに近づける

2)四足歩行の動物は食べない。卵は1日1個まで

3)野菜&果物をジュースで1日1.5〜2リットル飲む

4)胚芽を含む穀物といも、豆類を食べる

5)乳製品・キノコ・海藻類を食べる

6)レモン・ハチミツ・ビール酵母を摂る

7)油はオリーブ油かゴマ油を使う

8)水はナチュラルミネラルウォーターか浄水

9)禁酒・禁煙

一見して、星野式ゲルソン療法と似ていることに気づかれるだろう。まあ、それだけゲルソン療法ががん治療の本筋を押さえているということかもしれない。

しかし、諸君。ここで、「塩分はほぼゼロ」という点に注目である。

かすかな量であるとはいえ、あの「塩様」がついにご来臨されたのである! ああ、どれだけこの時を待ったことか!

1日の塩分摂取の限界は5g。野菜などの食材にも多少の塩分は含まれているから、調味料としての塩分はできるだけ控えた方が良いとのこと。それでも、刺身に多少の醤油が使える喜びは大きい。

「四足歩行の動物は食べない」にも注目だ。つまり、二足歩行や一足歩行、あるいは五足歩行の動物なら食べてもよいということではないか!

現実的には二足歩行の「鶏肉」なら食べられるということだ。(一足歩行や五足歩行で美味しい動物がいたら、ぜひお知らせ頂きたい)

実際には、やはり脂分が少ないささみが良いとのことだが、星野式ゲルソン療法までの「完全菜食主義」からのわずかばかりの譲歩は朗報である。