医療・健康・食

末期がんになってわかった「食事療法」の希望と大いなる困難

働き盛りのがん闘病記(7)
朱郷 慶彦 プロフィール

野菜ジュースのつくりかた

星野式ゲルソン療法の特徴を一見して、ぱっと目につくのは、野菜ジュースの飲み方が、1日13回という尋常でない条件から、1日3〜5回というやや現実的な条件に緩和されたということだろう。

1日3回ならば、朝ちょっと多めにジュースを作って、昼の分は水筒で持ち歩き、夜は再度ジュースを作って飲む、というやり方でも何とかなりそうである。

材料は、人参、りんご、レモン。すべて有機栽培のものが望ましい。400ミリリットルを作る場合、人参5〜6本、レモン1個、りんご1〜2個というのが適量ではないかと思われる。これが1回あたりの最低量だ。

ジュースはスロージューサーという繊維質を壊さずにゆっくり搾ってくれる機械がお勧めだ。がん患者の間では、T-falかパナソニック製のものが好評のようだ。T-fal製は1万5千円程度、パナソニック製は2万5千円程度で売られている。いずれも結構な値段だが、毎日使うものなので、ここだけは奮発することをお勧めする。

ネットで検索すれば、Amazonあたりで他のメーカーからももっと安いスロージューサーが販売されている。レビューもなかなか良い。ついそちらを買いたくなるが、止めた方がよろしい。

恐らくそのレビューはステマではないかと私は睨んでいる。安いジューサーはとにかくすぐ壊れるという話ががん患者の間では公然とささやかれている。毎日使うものが、すぐ壊れるのでは、安物買いの銭失いの典型だ。

実際、私はT-fal製のものを買ったが、それでも1ヵ月ほどで不調が現れ、2ヵ月ほどで1台を使いつぶしてしまった。そこで、2台を買い足し、その2台を交互に使うようにしたところ、以後機械の不調はなくなった。

 

あと、上記で私は、朝に作ったジュースを朝、昼の2回に分けて飲むと述べたが、実はこれは正しい星野式ゲルソン療法ではない。

野菜ジュースで最も重要なのはビタミンやβ‐カロテンなどの有効成分である。この有効成分を大量に摂取することでがん細胞を死滅させる効果があると考えられているわけだが、これらの有効成分は搾ってから時間が経てば経つほど劣化してしまうので、できるだけ搾りたてをすぐに飲むべきなのだ。

どうしても仕方がなければ水筒で持ち運ぶしかないのだが、できれば、1食ごとにジューサーで新鮮なジュースを搾りたいものである。

有機野菜を1年を通して入手しようと思えば、ネットに頼るしかない。上記に1回あたりの必要量を書いたが、1日ではその3〜5倍となる。1ヵ月ではその30倍だ。これは並大抵の量ではないことは覚悟すべきである。

私の経験では、月に10万円以上は有機野菜だけでかかることになる。

しかも、夏場は新鮮な有機野菜は入手しづらくなる。人参など、5月ごろからすでに味が薄くなってくるのがはっきりと分かる。6月から9月ごろまでは、まともな有機野菜はまず手に入らない。購入した量の5分の2ほどが腐っているような事態も覚悟しておく必要があるだろう。

砂糖は大敵。されど、黒糖なら…

がんになって初めて知った事実であるが、とにかく、がんの大好物は砂糖なのだ。糖分をエサとしてがん細胞は増え続ける。がんになったら、甘いものは大敵である。

しかし、この場合の砂糖とは、白い砂糖、すなわち精白された砂糖のことである。

砂糖に限らず、ゲルソン療法では精白された穀物もすべて禁止であるが、これには理由がある。

穀物の主成分は炭水化物。炭水化物は消化されれば糖分に変化する。糖分が体内に入ると、血糖値が上がるのが人体のメカニズムだ。そして、精白された穀物や、白砂糖は、急激な血糖値の上昇を引き起こすのである。

血糖値の急激な上昇は人体に様々な弊害をもたらす原因だ。AGE(終末糖化産物)、活性酸素などが発生するのも、インシュリンが分泌されるのも、この血糖値の急激な上昇が原因であり、これらは肥満、糖尿病、老化、そしてがん細胞の活性化を引き起こす。

そこで、ゲルソン療法でも星野式ゲルソン療法でも、穀物は精白する前の状態(米なら玄米、麦なら全粒粉)で食べることことが決められている。

精白する前の穀物には、食物繊維他の成分が豊富に含まれており、これらを一緒に摂取することで、血糖値の上昇ペースは緩やかになるからである。いついかなる時でも、血糖値の上昇を緩やかに保つことが、ダイエットだけでなく、がん治療にも重要なのだ。

そして星野式ゲルソン療法では、砂糖も精白される前の状態、すなわち黒糖であるならば、血糖値の急上昇は起こりにくいから摂取可能とされている。すなわち、夢の甘味が味わえるのである。ブラボー!(もちろん量は控えめに)