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企業・経営 経済・財政 週刊現代

ヤマト運輸の「大英断」はデフレ脱却への号砲だ

「賃金」が上がる!「給料」も上がる!

労働者の賃上げにつながる動き

「ヤマト運輸もそうですが、労働現場で人手不足が顕著になっています。また、学生の就職活動や求人倍率を見ても、空前の『売り手市場』になっている。待遇がよくなければ働き手を採用できないため、企業側は賃金や給料を上げざるをえません」(神戸大学大学院経営学研究科准教授・保田隆明氏)

長くデフレに苦しんできた日本経済にようやく春が訪れそうだ。

厚生労働省は3月9日に毎月勤労統計調査で1月の名目賃金は0.5%増だったと発表した。この傾向は昨年から顕著で、'16年の賃金上昇率は大企業で0.6%、中小企業では0.9%だった。人手不足が深刻になり、賃金を上げる動きが活発になっている。

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象徴とも言えるのが、ヤマト運輸だ。労働者の賃上げにつながる「運賃値上げ」交渉を、順天堂大学特任教授の川喜多喬氏は歓迎する。

「物流業界における労働力不足の背景には、賃金が低いがゆえに人が集まらないという原因がありました。さらにその背後には運賃水準が低く抑えられている問題があります。私はこれがデフレ脱却を遮るひとつの要因であると考えています。

利用者の中にはネット通販の売りである『送料無料』が有料化するのではないかという懸念もあるようですが、結果的には消費者の生活をより豊かにする可能性を秘めており、ヤマト運輸の決断は大英断だったと評価する日が来るでしょう。

運賃の値上げの先に労働者の賃上げが見えてきただけでなく、デフレ脱却の兆しになるとも考えられるからです。交渉がうまく行けば、同業他社にもそうした動きが波及していく可能性があります」

 

ヤマト運輸にかぎらず運送業ではアマゾンをはじめとするネット通販の取扱量が激増し、現場が疲弊している。労働に見合った運賃を求めて、値上げ交渉に踏み切ったのだ。ヤマト運輸の広報担当者はこう話す。

「私どもには今後も社会的インフラである宅配便サービスを継続して維持する使命がありまして、お客様への品質をより向上させていくことも必要だと考えています。そういったところから、運賃の見直しをしている段階でございます。

具体的なところはまだ決まっていない状況ですが、法人のお客様に対して一律に上げるのではなく、大口のお客様――たくさん出荷されていて、割引率の大きいお客様から随時、交渉していく予定です」

名指しこそ避けたが、運賃値上げの対象となるのは、同社の大口契約者であるアマゾンであることは明らかだ。

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