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学校・教育

わが子の「学校・塾・受験」問題を考えるヒントになる3冊

リレー読書日記

根底にあるのは文科省への不信

森絵都の『みかづき』の噂を聞いたのは、信頼する編集者からだった。「塾を舞台にした小説なんですよ。その先は……秘密です」。

なんとも思わせぶりな誘い文句だったが、読み始めてから読了まではアッという間だった。

『みかづき』は、昭和から平成にかけ、教育を生業にした家族の年代記である。物語の中心に座るのは、赤坂千明。彼女は昭和9年に生まれ、国民学校で学んだことで、公教育に対する決定的な不信感を抱くようになる。

昭和36年、千明には蕗子という小学校1年生の娘がいるが、父親はいない。私生児だ。

蕗子が通う小学校には、放課後に子どもたちの補習を自主的に行う大島吾郎という不思議な用務員がいた。千明は吾郎の「教える能力」に惚れ(見込んで、といった方が正確か。それが後にすれ違いを生む原因となる)、塾の講師にスカウトする。

 

自宅で始めた塾は評判となり、受験競争がエスカレートするなか、ふたりの「千葉進塾」は大きな発展を遂げる――。

しかし『みかづき』は単なる成功譚ではない。根底に流れるのは森絵都の文部省に対する不信感であり、国に対する痛烈な批評だ。戦後日本の「塾史」がエンターテインメントへと昇華している。

作品では文部省を「太陽」、塾を「月」にたとえ、千明の公教育に対する怒りがブルドーザー級の物語の推進力となる。

ただ、この小説の最大の特質は「女系家族小説」という部分にある。面白いことに、重要な決定はすべて主要キャストである「赤坂家」の血を引く女性たちが行い、男たちは脇役に置かれている。登場する女性たちは例外なく生命力があり、女性の力が戦後の日本を支えてきた――そんな思いが行間から立ち上がる。

キャラクターの書き分けが見事だ。千明は狷介な経営者であり(ただし、男性に対しては極めて不器用である)、長女の蕗子は柔和で、次女の蘭は破天荒。三女の菜々美は奔放。娘たちの造形は、2011年にNHKで放送された尾野真千子主演のドラマ、『カーネーション』の三姉妹を連想させる。

ところが、最終章の「新月」にいたって意外な脇役が台頭し、ストーリーは予想外の方向へと広がりを見せ、『みかづき』は現状の日本を映し出して終わる。

読み終わると、日本人の教育への“狂熱”に呆然とする思いだ(わが家で受験生を抱えていたという事情もある)。そして、家族のあり方について内省的にならざるを得ない。

4月に発表される「本屋大賞」で本命視する声も聞くが、それも当然だろうと思う。

親が子供に抱く「幻想」

では次に、塾に通わせる親の立場から本を探して目に留まったのが『中学受験 6年生からの大逆転メソッド』。

著者はかつて塾で算数の講師を務め、今は中学受験専門カウンセラー。帯には「指導料1時間2万円 なのに3年待ち!」という惹句が躍っている。マジか。