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ついに現実味を帯びてきた、タカタが中国資本に吸収される日

責任を擦り付け合っている間に…

再建スキームに三代目が難色?

「売り家と唐様で書く三代目」という諺がある。その意味は、初代が苦労して創業し、二代目は初代と一緒にあるいは後ろ姿を見ながら事業を大きく飛躍させるものの、苦労知らずの三代目は、事業は疎かにして習い事ばかりしていたので、商売が傾いて家を売る時には立派な文字で「売り家」と書くことができる、という皮肉である。

この諺がぴったりと当てはまる企業がある。勘の鋭い読者はすぐに思いつくだろうが、欠陥エアバッグが暴発して死傷者を出した自動車部品大手のタカタだ。同社はシートベルトなどの安全関連の部品も製造しているが、主力はエアバッグだ。

タカタの原点は1933年に高田武三氏が織物工場を創業したことにある。56年には法人化され、息子で二代目の重一郎氏が社長を継いだのが74年。この頃にエアバッグに参入、ホンダと二人三脚で開発に挑戦して、87年にはホンダ「レジェンド」に国内初のエアバッグが搭載された。現会長兼社長の重久氏は、創業者の孫で2007年に社長に就いた。

 

この「三代目」重久氏の評判が、社内外ですこぶる悪く、「彼の志と能力の低さがタカタ問題を大きくさせ、彼が経営陣に留まっていることで経営再建のスピードも極端に落ちている」(金融筋)と指摘する声は多い。

タカタ問題について簡単に振り返ろう。衝突を感知してエアバッグを膨らませる「インフレーター」と呼ぶタカタ製の主要部品で、同社はガスを発生させる材料に硝酸アンモニウムを用いたが、これが高温多湿化下では経年劣化を起こすことと、設計不備が重なって暴発が起こり、米国では11人が死亡した。

これが米国で厳しく批判され、米司法当局は17年1月、捏造データを自動車メーカーに渡したなどとして、タカタの元幹部3人を起訴した。これを受けてタカタは刑事責任を認め、2500万ドルの罰金を支払い、被害者への補償のために1億2500万ドルの基金を設立することなどを決めた。

【PHOTO】gettyimages

さらに、自動車メーカーが1兆円以上のリコール費用を肩代わりしているとされ、このうち何割かをタカタが自動車メーカーに支払うことになると見られている。タカタの財務状況では負担に耐え切れないため、100%減資して法的整理によって一旦は倒産させ、スポンサー企業から出資を受けて再建に乗り出す局面にある。

しかし、金融筋によると、このスキームに重久氏が反対して、梃子でも動かない状態にあるという。重久氏が反対する理由は、減資によって自分の財産が紙切れ同然になることに反発しているのだそうだ。

タカタは、重久氏が個人では筆頭株主で、高田家関連の会社を含めると出資比率の過半数を創業家が抑えている。上場した際に高田家には多額のキャピタルゲインが入っているので、個人的にお金には困っていないが、重久氏は減資に猛反対しているという。

タカタ内部に詳しい複数の関係者からは「重久氏は感情的になっている」との声も漏れ伝わる。その要因の一つは、母親の暁子氏の存在だ。暁子氏はタカタ財団理事長を務め、隠然たる力を持つ。

「特に重久氏には厳しく、お父さんを見習って事業を大きくしなさいと叱咤激励し続けてきたので、重久氏は父や母に対してコンプレックスがあるうえ、自分の代で会社を潰してはならないとの思いが強いので、なかなか法的整理に踏み込めない」と、その関係者は見ている。

また、別の関係者は「重久氏は、暴発するエアバッグの問題はタカタだけの責任ではなく、採用した自動車メーカー側にも責任があるとの思いが強い」と言う。

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