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防衛・安全保障

違和感だらけ…南スーダン撤退を政府が決めた「本当の事情」

目的は、安保法の既成事実化だったのか

「なんでこのタイミングなんだ」

現地の陸上自衛隊が「日報」で報告した「戦闘」を、「衝突」と稲田朋美防衛相が言い換えた南スーダンの国連平和維持活動(PKO)。政府は10日、唐突に撤収を発表した。

南スーダンでは戦車や迫撃砲を動員した本格的な戦いが繰り返され、野党は参加5原則の「停戦の合意」は破綻したと追及したが、政府は最後まで「参加5原則は崩れていない」と主張し、譲らなかった。

安倍晋三首相の「盟友」トランプ米大統領が得意とする「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの事実)」は安倍首相が先輩格かもしれない。

首相が撤収方針を表明したのは10日午後6時過ぎ。森友学園の籠池泰典理事長が記者会見を開き、テレビ中継されている最中だった。

防衛省の記者クラブの中では「ええっ」と突然の撤収発表に驚きが広がり、「なんでこのタイミングなんだ」と疑問を口にする記者もいた。

この日午前には韓国の朴槿恵大統領が罷免され、夕方は森友学園の籠池理事長退任と小学校認可申請の取り下げ発表があった。翌11日は東日本大震災の発生から6年目だ。11日のテレビニュースや新聞朝刊が大混雑するのを見越し、撤収の扱いが小さくなるのを狙って発表したのは明らかだった。

 

森友問題は高い支持率を背景に安定した政権運営を続けてきた安倍首相にとって初のスキャンダルになりかねない。

4月開校が予定された小学校は「安倍晋三記念小学校」の名前で寄付集めを行い、安倍首相夫人の昭恵さんが名誉校長として名前を連ねていたことがわかっている。国会で追及された首相は「私や妻が(国有地売却に)関与していたとなれば、首相も国会議員も辞める」と明言した。

一方、南スーダンPKOでは自衛隊に死傷者が出た場合、「首相を辞任する覚悟はあるか」と野党から問われ、「もとより(自衛隊の)最高指揮官の立場でそういう覚悟を持たなければいけない」と述べ、首相を辞任する覚悟を示した。

首相を辞任する条件を自らの意思でふたつも並べた安倍首相は、南スーダンPKOからの撤収を表明することにより、条件のひとつを消し去ることになる。

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首相が記者会見で述べた撤収理由は、肩すかしの内容だった。

「南スーダンPKOへの派遣は今年1月で5年を迎え、施設部隊の派遣としては過去最長となる」「南スーダンの国づくりが新たな段階を迎える中、自衛隊の施設整備は一定の区切りがつけることができると判断した」

野党からあれほど追及された治安の悪化には一言も触れていない。昨年7月、自衛隊の派遣されている首都ジュバで大規模戦闘があり、住民や他国のPKO要員に大勢の死傷者が出たにもかかわらずだ。

自衛隊による道路の補修距離や用地造成面積を強調し、「ミッション・コンプリート(任務完了)だから撤収だ」とでも言いたげである。

菅義偉官房長官は10日の会見で「昨年9月ごろから今後のあり方をどうすべきかとの問題意識から、国家安全保障会議(NSC)を中心に検討を行ってきた」と語ったが、忘れてもらっては困る。

昨年10月8日、ジュバを訪問した稲田防衛相は「(治安は)比較的落ち着いている」と首相に報告した。これらの報告をもとに安倍政権は11月15日、自衛隊に安全保障関連法にもとづく新任務「駆け付け警護」を付与する閣議決定を行ったのである。