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残念な「南スーダン撤収」によって、日本が失ってしまうもの
「平和構築」の専門家はこう見る
篠田 英朗 プロフィール

国連内での影響力を急速に高める中国

かつて日本は、米国とともに国連財政を支えており、アジア諸国の中では、突出した財政負担をしている国であるという自負を持っていた。しかし今や、全ての面で、もともと安全保障理事会常任理事国である中国に、大きく水をあけられている。上記の日本と比較するために、中国の国連PKOへの関わりを見てみよう。

中国のPKO分担金比率は10.29%で、アメリカに次ぐ2位である。ちなみに日本は9.68%で3位につけるが、中国との差は、今後さらに開いていくことなっている。

要員提供数では、中国は、軍事・警察要員の派遣貢献数が2,594人で、12位につける。常任理事国の中でトップである。ちなみに日本は南スーダンに派遣した自衛隊員数を数えて、ようやく54位であった。5月以降は、最下位近くに落ち込んでいく。

日本が南スーダン以外に国連PKOに要員提供していないのとは対照的に、中国は10件ものPKOミッションに要員を派遣している。

マリ(MINUSMA)、ダルフール(UNAMID)、レバノン(UNIFIL)、リベリア(UNMIL)、南スーダン(UNMISS)に対して部隊派遣を行って、巨大ミッションの屋台骨となっている。

リベリアには140人の武装警察部隊を派遣しており、治安維持にあたる国連警察の任務を支えている。すでにPKO部隊の司令官ポストに中国人が就いた実績もある。

こうした動きの中で、現在、中国が国連本部の平和維持局長(DPKO-USG)のポストを狙っているということが、公然の噂になっている。平和維持局長は要職で、世界に展開する16のPKOミッションの運営や新規ミッションの設立に大きな影響力を行使し、さらに広範な政治的影響力を行使し得るポストだ。

中国は、他の国連の重要ポストも次々と自国出身者に獲得させることに成功しており、国連内での影響力を急速に高めている中で、平和維持局という国連の中枢部分にも強い関心を持っているわけなのである。

日本は、過去数十年にわたって国連安全保障理事会の常任理事国になることを一つの大きな外交目標としてきた。その障壁の一つが、安保理で拒否権を持つ中国の存在であった。

中国の国力が整備されていなかった過去においてもそうだったとすれば、あらゆる面において中国が日本を凌駕するに至った今はどうだろう。同じ東アジアからもう一つの常任理事国を出すことが、さらにいっそう困難になっていることは、明らかだ。

日本は伝統的にASEAN諸国と深い結びつきを維持しようとしてきた。しかし中国の東南アジア諸国に対する影響力は高まり続けており、ASEAN主導の安全保障フォーラムのような機会にも、中国は、積極的に貢献しようとしている。

国連総会での投票となれば、やはり大票田となるのはアフリカ諸国なので、日本はそれなりの開発援助をアフリカに投入している。しかし近年は中国が、圧倒的な額の援助を提供して、アフリカ諸国に強い影響力を行使していることは、よく知られている通りである。

ちなみに国連PKOに貢献しているのは後進国だけだ、といった俗論がある。確かにアメリカとロシアの要員提供面での貢献は極小だ。だが日本が上回るのは、それらの冷戦時代の旧超大国だけだ。

中国、イギリス、フランス、さらにはドイツ、インド、ブラジル、南アフリカといった準大国で常任理事国に関心がある諸国は全て、現時点ですでに、日本よりもかなり多い要員派遣をしている。

ASEANのリーダーであるインドネシア、AUを主導するエチオピア、ケニア、ナイジェリア、エジプトなども、軒並み1,000人以上の貢献をしている。南スーダンからの撤収前の現時点でも、緊迫する朝鮮半島情勢への対応を優先せざるをえないはずの韓国ですら、日本の南スーダンへの要員貢献数の二倍以上の要員を、国連PKOに提供している。

そもそも常任理事国をはじめとする他の大国は、NATOやEU、あるいはAUやECOWASといった(準)地域機構が実施している平和維持活動に対して、あるいは単独介入という形態で、要員派遣を含む大規模な貢献をしている。

属する地域機構を持たない現代世界では希有な国である日本は、他国より目に見えて大きな国連への関与をして初めてつり合うくらいの国であるはずである。しかし現実の日本の行動は、逆の方向に振れている。