photo by iStock
格差・貧困 ライフ 社会保障・雇用・労働
月収300万の清楚系高級ソープ嬢が「鬼出勤」を続けるワケ
なぜそこまで働いてしまうのか…

鈴木涼美さんがオンナのお金の稼ぎ方、使い方について取材考察する連載「オンナの収支報告書」。今回は「鬼出勤」を続ける勤労意欲の異常に高い吉原高級ソープ嬢に密着します!

(※バックナンバーはこちら http://gendai.ismedia.jp/list/author/suzumisuzuki

失われる機会に怯えるように

過労死裁判などが報道されるとその恐ろしい勤務実態に色々なところで「ひどい」とコメントが漏れるのを聞くが、「働きすぎ」の実態を具体的に目撃すると、ワイドショーやニュースで見聞きするそれとはまたちょっと違う感想を持つこともある。

というか今時、「寝る暇もなく働け」だとか、「先輩が帰るまで絶対帰るな」なんていうある意味では勇気ある発言を聞く機会よりも、「そろそろ帰ったら?」「明日出てこなくていいから休めよ」「頼むからあとは明日にしよう」とけん制する良識的な発言を聞くことの方が多い。

夢中になって入れ込んで働きすぎる部下に適度な休みや適度なペースを教えることが上司先輩の仕事になりつつあり、拙いながらも実践している人は飛躍的に増えた。

だから日本人は、なんて嫌味を言われても、仕事なんて入れ込んでやればやるほど、責任感が強ければ強いほど、やりすぎてしまうものなんだと思う。例えば新聞記者時代に責任感が強く、良い仕事をする人たちを見ていると、ついついやりすぎてしまう、という光景をよく目の当たりにした。

そして仕事が好きと裏表の関係にある「寝ている間に事件が起きるかも」「サボっていたら担当している会社や省庁が大発表するかも」「今日切り上げてご飯食べに行ったら他社の記者に抜かれるかも」「うっかり目を通しそびれたメディアにものすごく重要なニュースが載っているかも」という焦りや不安も度々感じた。

Wさんという女性の上司は、私たち若い女性記者の間では優しくて博識、理路整然としている憧れの存在であった。ただ、独身40代でひたすら働く彼女の生活を見ていると、とても真似できるものでは無い、という意見もみんながなんとなく共有しているものであった。

新人よりも早く会社について、日本の地方紙や専門紙はもちろん、海外メディアやインターネットの記事をくまなくチェックし、マーケットが空いている時間は3画面に睨みをきかせて、記事校了後の深夜には専門書や過去の新聞などに目を通す。かっこいいけど真似はしたくない。

 

またSさんという先輩もまた、取材先への朝周りに始まって、常に求められることの3倍先をいく行動をしていていかにもできるキャリアウーマンというその働き方が尊敬を集めていた。

私や仲のいい同期も「すごい」「偉い」を連発しながら、仕事一色の彼女たちの働き方を内心半ば冷笑的に揶揄することすらあった。後輩が呆れるほどに自主的に働くSさんは「私はビビりだから、毎日チェックしたり実際に現場に行ったりしないと、何か見逃す気がする」と言っていた。

京大卒のキャリアウーマンですら、働きすぎる姿はかっこいい反面、外から見ると少し滑稽にすら見える。本人たちは誰に強制されるわけでもなく、はたから見ればさほど差し迫った必然性もなく、これが終わったら次はこれ、それも終わったらあれもしなきゃと到底こなしきれなそうなスケジュールを消化していく。一休みしたり早めに帰ったりすることで、失われる機会に怯えるようにして。

そしてそれは別に、いわゆるキャリア志向の強いエリート族に限られたものではない。

出勤がフレキシブルであることが大きな特徴の一つである風俗店でも、自らの意思ではたから見たら滑稽に思えるほど働きすぎの女性たちがいる。自由にシフトを組めるはずなのに、或いは、自由にシフトを組めるからこそ、彼女たちの過剰労働は底なしである。