経済・財政

あなたの口座に「眠った預金」に、国が狙いをつけたワケ

これほど使い勝手のいい資金はナシ

筆者の預金も没収されてしまう!

昨年末に休眠預金活用法が成立したことで、金融機関に10年以上放置された預金(=休眠預金)が民間の公益活動に充てられることになった。 

金融機関では毎年、約1000億円の休眠預金が発生しており、本人に連絡がついたり相続人から請求があったりして払い戻した分を差し引いても、年間500~600億円が金融機関の利益になっていたという。

この法案で最初に危惧するのは、「国が個人の預金を没収するのではないか」ということだろう。

この法案は超党派の「休眠預金活用推進議員連盟」によって起草されたが、政治家も当然、「預金没収法案」とのレッテルを貼られることを強く警戒していて、休眠預金が預金保険機構に移管された後でも、預金者が金融機関を通じて請求すれば機構が支払うことになっている。

「預金者の請求権は守られる」との説明に加えて、国が「没収=活用」しなければ金融機関が「没収」するだけだという事実が、世論の反発を抑えて法案を成立させた要因だろう。

ここで、「休眠預金が金融機関の利益になること自体がおかしい」と思うひともいるだろう。これはもっともで、金融機関は休眠預金を利益として計上する前に、できるかぎり預金者(ないしは正当な相続人)を探すよう努力する義務がある。

しかしそれでも払い戻し先が見つからない場合、そのまま半永久的に放置しておけばいい、ということにはらならない。

銀行にとって預金は債務で、預金者は債権者だ。休眠預金というのは、「お金を借りたものの貸し手と連絡がつかなくなり、返済を催促されることもない」のと同じだ。それを会計上の利益に計上させれば法人税の課税対象になるのだから、休眠預金は銀行に「没収」させた方がまだマシなのだ。

もっとも銀行からすれば、法律上は返済義務がなくなったお金でも、預金者や相続人から返済の請求があった場合、それを拒否すると紛争になるのは目に見えているから、実務上は時効にかかわらず払い戻し請求に応じていたようだ。今回の法律でも、休眠預金を移管させる預金保険機構に同じ基準を適用したのだろう。

休眠預金の活用事例としてイギリスが挙げられているが、それ以外にも預金を「没収」する国はある。

私が経験したのはオーストラリアの銀行口座で、かつては7年、現在は3年間、口座の使用履歴がない場合、口座資金はオーストラリア政府によって差し押さえられてしまう。口座差し押さえの期限が迫ると銀行から通知が来るが、そのときにはセキュリティのため口座が凍結されており、本来なら支店窓口で手続きしなければならない。

海外の預金者への救済措置として口座凍結解除の依頼書を送る方法が用意されているものの、そのためにはオーストラリア大使館・領事館で認証されたパスポートのコピーが必要だ。

という理由で、3年ほど前に三田にあるオーストラリア大使館に行ってきた。パスポートの認証には正当な理由が求められるが、「口座が凍結されている」と説明したら、係官は「またか」という顔であっさり手続きしてくれた。同じようなトラブルで困っているひとがじつはたくさんいるらしい。

――この原稿を書いていて思い出したが、あれからもうすぐ3年になるので、このままでは預金が「没収」されてしまう!