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NHK解説委員「水野さん」が語る、いま福島で起きていること

人は忘れていく。だからこそ伝えたい

「非常に危険な状況です。一刻も早く燃料棒を冷やすことです」――。

6年前のあの日、NHK解説委員・水野倫之さんの切実な声を聞いた視聴者は、「この人は信用できる」と思った。水野さんはいまも福島に通い続けている。

問題は何も終わっていない

震災から6年が経ち、福島への関心は日々、薄らいでいるように思えます。月日が経ったのですから、いたしかたない面もありますが、実際には原発の廃炉にしろ、復興の問題にしろ、まだ、何も終わっていませんし、解決していません。

廃炉作業は困難の連続で、今も8万人の方々が避難生活を余儀なくされています。問題は山積しているのです。それなのに大きな変化がないとなかなか注目されない。

事故がどうして起きたのか、その時、何が起こったのか、そして今、何が起こっているのか。それらを伝え続けなくてはいけない……。切り口を変えてみたり、タイミング良く解説するにはどうしたらよいのかと、悪戦苦闘しています。

人は震災や事故のような悲しい思い出は手放そうとする生き物です。そうでないと辛くて生きていけませんから。でも、復興も除染も廃炉も賠償も現実を見つめ、なるべく早く進める必要がある。そうでないと帰還を願いながらも果たせずに人生を終えてしまう方々が出てしまいます。

東日本大震災により福島第一原発はメルトダウンを起こし、大量の放射性物質を広範囲にまき散らす重大な事故を起こしました。

政府と東京電力は最長40年で廃炉にする工程表を掲げ、2021年には溶けた燃料の取り出しを始める計画を立てました。

しかし、原子炉を突き破って格納容器まで溶け落ちた燃料を取り出すのは世界でも初めてのこと。その前段階として、格納容器内がどうなっているのか、溶けた核燃料がどういう状態になっているかを、まず調べなければならない。

そこで先日、探査ロボットの通称「サソリ」が格納容器内に投入されたのですが、正体のよくわからない堆積物に阻まれ故障し、すぐに動かなくなってしまった。

今年の夏には溶けた核燃料をどうやって取り出すのか、その方針を決める予定です。

しかし、このように内部の詳細もまだ分からない状況で「取り出し方針」が決められるものなのか。工程を優先しすぎると現場にしわ寄せが行き、安全がおろそかになるおそれもあります。一旦決めたことにこだわるのではなく、実態に合わせて工程を見直していかなければならないと思います。

 

廃炉に立ちはだかる壁

今、福島で進められている廃炉計画は、溶けた核燃料を全量取りだすというもの。これに対してチェルノブイリでは「石棺」方式が取られました。溶けた燃料をすぐに取り出すのは無理なので、上からコンクリートで何重にも固めて放射性物質が外に漏れ出ないように、文字どおり石棺のように固めるという方法です。

実は去年、福島についても廃炉に関わる技術者たちから、取り出すことを大前提としつつも「石棺も選択肢のひとつ」とした計画案が示されました。「取り出し」は相当な困難を伴うという思いからです。

これに対して福島県は「石棺はあり得ない、そういうことを考えてもらっては困る」と強く反発しました。福島県からすれば、溶けた核燃料を除去しない限り、危険物質がそこに存在し続けることになるわけで、それでは復興の妨げになるという考えです。その心情は確かに理解できます。

ただ、私がこの一件で最も問題だと思ったことは、その後、経産省が技術者の責任者を呼び出して注意をし、計画案から石棺方式を削除させたことです。

政府として絶対に「取り出す」というのであれば、技術者の意見を聞いた上で、「石棺方式は取らない」という判断を示せばいいだけです。何も技術者を呼んで叱りつける必要はありません。技術者には政策判断とは別に、あらゆる技術的可能性を提示してもらうべきでしょう。

技術者を萎縮させては、いいアイデアも出なくなり、結果として廃炉のマイナスになってしまいかねない。