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確定申告で「損する」高齢者が続出中 〜この落とし穴に気をつけよ!

複雑な税制の盲点

「節税になると思ったのに……」。損をしてしまった申告者は、こう口をそろえる。たしかに納税は1円でも少なくしたいものだ。だが、複雑な税制には意外な「落とし穴」もあることを知っておきたい。

株の「損切り」は要注意

平成29年の確定申告の期限が、3月15日に迫っている。この時期の税務署はとてもにぎわう。確定申告を義務付けられていなくても、様々な控除を受けることで、払いすぎた税金を1円でも多く取り返そうとする人も多い。

だが、任意での確定申告には思わぬ「落とし穴」があることをご存じだろうか。節税をしたつもりが逆に損をしてしまった、そんな「実例」の数々を紹介していこう。

①繰越控除で医療費の窓口負担が3割に

東京都に住む青木慶介さん(77歳・仮名)は、40年近く勤め上げた会社を定年退職してから10年以上、妻とともに年金生活を送っていた。

だが一昨年、そんな青木さんにある悩みのタネができた。なけなしの預金から捻出した株式投資に失敗し、200万円の損失を出してしまったのだ。

数年前に持病が見つかり、若いころから続けていたスポーツも楽しめなくなっていた青木さんだけに、株式投資は彼が久しぶりに見つけた趣味だったのだが――。

 

途方に暮れる青木さんだったが、元税理士の友人が次のようにアドバイスしてくれた。

「それだったら確定申告をして、『損切り』をするといいですよ。来年以降の株式の収入額から、今年の損失額が控除されるんです」

「損切り」とは、正式には「譲渡損失の繰越控除」と呼ばれるもので、上場株や投資信託、FX取引で損失が出た場合、その損失額を翌年以降へ最長3年間繰り越し、株の売却益や配当所得を相殺できるしくみのことである。

たとえば100万円損失を被り、翌年30万円売却益を得た場合、その年の所得はプラス30万円ではなくマイナス70万円とみなされ、所得税が軽減される。

もっとも、青木さんがこのことを知らなかったのも無理はない。税理士の土屋裕昭氏は高齢者が確定申告する際の注意点について、次のように解説する。

「年金だけの収入の方の場合、『確定申告不要制度』と呼ばれる制度があります。国民年金など公的年金の収入が400万円以下かつ、それ以外の所得が20万円以下の人は、所得税と復興特別所得税の確定申告をしなくてもいいと定められています」

たしかに、家賃収入など年金以外の収入が特にない人は、面倒な確定申告に縁遠くても仕方がないのだ。

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「損益通算」にも落とし穴が

しかも青木さんが投資していた株式は、証券会社が売買を代行する「源泉徴収あり」の証券口座を利用していて、本来は確定申告の必要はないものだった。

税務署で開かれている無料の相談などを活用し、繰り越し控除の申告を終えた青木さん。加えて、翌年は株で150万円儲けることに成功し、ひとまず安心していたのだが――。