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地震・原発・災害 行政・自治体
いじめ、不登校、諦め…原発事故で故郷を奪われた子どもたちのその後
6年ぶりの一時帰宅に密着

2017年3月11日、東日本大震災の発生から丸6年を迎える。

原子炉の事故を起こした福島第一原子力発電所では、溶け落ちた核燃料のロボットによる内部調査が始まったばかり。放射性物質に汚染された水の処理はえんえんと続き、廃炉までの道のりはいまだ深い霧に包まれたままだ。

そんななかでも、子どもたちは成長してゆく。原発事故による避難指示のために、生まれ育った土地を追われた福島の子どもたちは、大切に胸にしまいこんだ幼いころの記憶とともに、やがて故郷に帰ってくる。

今年15歳を迎えた子どもたちは、立入禁止の制限を解かれ、6年ぶりに思い出の地に足を踏み入れた。彼ら彼女らの姿に焦点を当てたNHKスペシャル『15歳、故郷への旅〜福島の子どもたちの一時帰宅〜』(3月10日放送)の大野太輔プロデューサーが、胸の内を語った。

15歳未満は一時帰宅すら許されない

東日本大震災以降、毎年3月が近づくたびに問われるのが、「○年目の被災地の今を見たい」というテーマだ。

私自身、被災地の放送局で震災前から番組制作を続けてきたが、「これが震災と原発事故から◯年の被災地です」と一概に描くのはほとんど無理だ。そう、同じ「被災地」であっても復興の歩みは一様ではないし、同じ「遺族」であってもその悲しみは均等でない。私たちはいつも断片から全体をとらえていくほかない。

私たちが今回企画した番組のテーマは「15歳の一時帰宅」だ。

(c)NHK

福島では、避難指示区域のうち帰還困難区域や居住制限区域の一部で、国や自治体が15歳未満の立ち入りを原則禁止している。子どもたちは15歳の誕生日を迎えると、それぞれに事故後の避難以来となる「帰宅」を果たす。

その子どもたちに密着取材すれば、「失われた6年」の姿形をとらえることができるのではないか? というのが企画の動機だった。

15歳という、多感な季節を生きる子どもたちにとっての「失われた6年」は、私たち大人が考える以上に大きく重い時間になるのではないか。そんな仮説をもとに、私たちは取材に取りかかった。

 

福島の子どもたちには不思議な「通過儀礼」がある。

原発事故に伴う避難によって故郷を離れて以来、放射線量の高い一部の地域については、いまも15歳になるまで原則立ち入りが禁止されている。子どもたちは15歳の誕生日を迎えると、それぞれに「一時帰宅」を果たし、そこで撮った写真を見せ合いながら、友だちと思い出を語り合うのだ。

私たちが調べたところ、この6年のあいだに、対象となる自治体で少なくとも3500人が15歳の誕生日を迎え、そのおよそ半数が一時帰宅を果たしたとみられる。番組は、こうした福島の15歳だけの「通過儀礼」をドキュメントしたものだ。

避難先でのいじめ、不登校、親の心の病

番組には、主に3人の15歳が登場する。それぞれ福島県大熊町、双葉町、そして浪江町出身の少女たちだ。

彼女たちは東日本大震災と福島第一原発事故に直面したことに加え、6年にもわたる避難生活を送るという、同年代のふつうの子とはまったく異なる人生を歩んできた。

避難者であることを理由とした「いじめ」や、環境の激変から「不登校」になったり、親が「心の病」になったり。6年のあいだに、それぞれ大きな試練を経験してきた。

(c)NHK

彼女らのうちのひとりは、いじめを受けて以来、気がつくと「どうでもいい」という言葉を口にするようになった、とカメラの前で語った。避難によって故郷での暮らしや友だちを失うと、彼女がそれまで懸命に打ち込んできたピアノからも遠のいてしまった。

一種の「逃げ」と自分でも感じていながら、「誰にも迷惑かけてないからいいですよね」と彼女は言う。