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中国への技術流出を阻止せよ!買収攻勢にさらされるドイツの場合
そして世界は新たな植民地体制へ?

中国による企業買収攻勢

去年の10月、アメリカの前オバマ大統領が大統領令を発し、あるドイツ企業の中国への売却を阻止するという出来事があった。

これをトランプ氏がやれば、自由貿易に対する不当な介入として大騒ぎになるだろうが、オバマ大統領なら大丈夫! ドイツ政府は素直に応じ、すでに発行していた認可を慌てて取り消し、審査のやり直しを命じた。

というわけで、売却の話は事実上潰れた。ドイツ政府は、アメリカに影響されたものではないと言っているが、中国がオバマ大統領を強く非難したことはいうまでもない。

もう少し詳しく説明しよう。

売却されかけたドイツ企業はアイクストロン(Aixtron)社といって、半導体の生産設備(有機金属化合物半導体用MO-CVD装置)を手がけるハイテク企業。1983年以来、この生産設備を世界中に3000以上も輸出しているという。

一方、そのアイクストロン社を買収しようとしていたのは、中国のFujian Grand Chip社。同社の後ろには、国有の投資ファンドがついている。アメリカは、アイクストロン社が同社に買収された場合、半導体技術が中国へ流出し、核技術、ミサイル、人工衛星など軍事産業に流用されることを懸念している。

なぜアメリカの大統領が、中国企業によるドイツ企業の買収に口を挟めるのかというと、アイクストロン社の支社がたまたまアメリカのシリコンバレーにもあるからだ。実は、中国の本当のターゲットは、ここの開発部門だと言われている。

そこで、大統領令はこのアメリカ法人の中国への売却を阻止し、同時に、ドイツにも考え直すよう警告した。

しかし、アメリカに言われるまでもなく、実はドイツ政府もこのところ、保護主義的な発言を強めている。ここ数年、中国資本のドイツへの進出はめざましく、2016年に入ってからは、すでに1週間に1社のペースで、各種企業の買収が進んでいるからだ。

 

ドイツの技術が流出する

ドイツには元々、中規模でありながらハイテクを持つ企業が多い。そういう優秀な中堅企業が、これまで技術大国ドイツを下からしっかりと支えてきたのだが、昨今のグローバリズムの波の中で、それらの企業が生き残れなくなってしまった。

そこに、ここぞとばかり、テクノロジーを必要とする中国企業が殺到し、すごい勢いで買収が進められている。

アメリカには外国投資委員会(CFIUS)という独立機関があり、同委員会の許可がないと企業の売却はできない。2013年にソフトバンクグループの孫氏がアメリカの電話通信会社スプリントを買収したが、その後、Tモバイルも買収しようとしたら、同委員会が首を縦に振らなかった。今回のアイクストロンのケースも同様だ。

それに比べてEUでは買収に関する規制がゆるく、中国資本はドイツ企業を買い放題だ。去年は1月から10月までの10ヵ月間で、ドイツ企業の中国による買収総額が120億ドルを超えた。ちなみにアイクストロン社についていた買収価格は6億7600万ユーロ。

おかげで今、アイクストロン社はとても困っているという。生き残るため、中国の資金で研究開発を進め、さらに、中国市場で有利に商売を展開していこうと考えていたのに、その夢が潰えてしまったのだ。

案の定、このニュースのあと、同社の株価は下落した。現在は、新たな投資家の発掘に励んでいるというが、中国人を抜きにすると、買ってくれる人はそう簡単には見つからない。

ちなみに去年は、ドイツの産業用ロボットメーカーKUKA社が、やはり中国の美的集団(ミデア・グループ)によって47億ドルで買収された。この買収を機に、ドイツでは技術流出の危険を叫ぶ声が急に高くなっている。