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「これまでの記事を撤回したい…」沖縄で私はモノカキ廃業を覚悟した
素人が扱ってはいけないイシューがある
中川 淳一郎 プロフィール

津田大介氏に諌められ

さて、こうした内ゲバ劇のうち、私が直接関与したのが「NEWSポストセブンアクセスランキング改竄事件」という実にくだらない騒動である。

私が編集するサイト・NEWSポストセブンに掲載した『「なりすまし」にフィフィさんへの悪口書かれた男性の反論』という記事のアクセスランキングが恣意的に下位に落とされたという推測を、反・レイシスト側の男がツイッターで述べたのがきっかけであった。

記事の詳細は省くが、基本的には在日韓国人男性の窮状を訴えたものである。そのランキングが急激に落ちたということは、この記事が上位にいて目立つことが我々にとって都合が悪いことだと男は指摘したのだ。どうも、我々をネトウヨ側のサイトだと思っていたようである。

私は男に対し、「アクセスランキングを恣意的にいじるようなことはしていない」と返事をし、そこから無意味なツイッターでの応酬が発生した。「カウンター」関係者からの罵倒などもあり、私は「ネトウヨはとんでもないが、カウンターもどうしようもないバカだらけだ」と考えるようになった。

元々私自身は超個人主義者で、社会問題に対してはほぼ関心がない。右も左もなく、「何が起ころうが、自分が荒波を乗り切るだけの能力をつけておけばいい」としか考えていない。正直、「なるようになれ」としか思っていないのだ。

その後、「カウンター」内部で「追放騒動」やら「リンチ事件」などがあり、「ちょっと過激過ぎでは?」と活動に異議を呈するものなら、彼らは集団で一斉に、罵倒ツイートを浴びせてくるようになる。

私はだんだん「どっちもバカだが、ネトウヨの方がカウンターよりマシ」といった感覚を抱くようになっていった。そして、「のりこえねっと」もカウンターと関係が深いため、「敵の味方は敵」論法により、私は冒頭のツイートを発したのだった(前置きが長くなって申し訳ない)。

これに対し、メディアアクティビストの津田大介氏からリプライが来た。

〈 2時間の記者会見全部見たけどそんな構図を作るようなものじゃなかった。あまりに酷いことをされて言葉を失っている中、何をどう話せばいいのかというものに見えた。見てないなら見た方がいい。構図は「沖縄VS他46都道府県」ではなく「沖縄vs現政府」なんだよ。〉

このリプライの後、津田氏から、ツイッターのDMでこんなメッセージが送られてきた。

〈 ネトウヨ巻き込んでツイッターの憂さ晴らしのネタに沖縄は使わない方がいいし、そうしてほしい。俺、2月に2回沖縄行くから、もし予定が合うなら一緒に行こう。2/9~2/10 と 2/18~20 〉

私はすぐに返事をした。

〈 諫めてくれてありがとう。18~20、一緒に行きたい。場所は高江? 〉

津田氏と私の関係はといえば単純で、「同学年の友達」である。そんな友達から、「キミの認識は間違っている点がかなりあるから、一回現実を見ろよ」と苦言を呈されたのだった。友からの提案には乗るしかないではないか。

 

かくして私は津田氏とともに沖縄へ行き、現地で色々な人と会うことになったのだが、その間、カウンター側と付き合いが深く、辛氏に対して理解を示す精神科医の香山リカ氏から、私に対する批判ツイートが届いた。私は「沖縄に行って勉強します」と返事した。

すると、香山氏からはこうリプライが来た。

〈 現地に行かれても偏った情報提供者にお会いになれば意味はありませんから(その点まさに辛さんの会見で指摘されていること。抑圧されている地にはしばしば抑圧する権力者に「感謝してます」と語るインフォーマントがいるものです)、どうぞ「正しく」勉強なさって来てください。〉

もう完全に、私が沖縄在住の右翼と会い、反対派批判の論拠をより強化すると考えているような指摘である。香山氏には津田氏の名前は挙げず、「『ニュース女子』の報道に激怒している人と一緒なので、真逆です」と返事をした。

このように、沖縄をめぐって、「右か左か」「基地に反対か賛成か」という二元論で外野が言い争うような状況が出来上がっている。しかも、勝手な憶測をベースとする批判がまかり通っているフシがある。香山氏の私に対する意見は完全にその類だろう。冒頭の私のツイートも同様である。

オレはもう沖縄について語れない…

かくして私は沖縄へと旅立った。

1泊2日という短い時間ではあったが、この2日間で私は「モノカキ」という仕事を廃業せざるを得ないとさえ思い詰め、これまで専門領域外の問題についてしたり顔で語ってきたことを心の底から反省した。

私はネットニュースの編集者を長く続けているだけに、もちろん、ネット空間の特徴や炎上問題については専門家として自信を持って発言できる。しかしながら、そこでやりとりされる専門領域外の問題、例えば生活保護や待機児童問題、在日、日韓関係、そして沖縄については、安易に発言すべきではないと感じたのだった。

今回、話を聞いた相手は沖縄国際大学の前泊博盛氏、関東地方出身で現在は沖縄在住のジャーナリスト・X氏、そして福島の原発問題に声を挙げることで知られるパンク・ロックバンド「ザ・スターリン」の遠藤ミチロウ氏(音楽フェスで沖縄を訪れていた)、高江のN-1ゲート前で抗議活動をする30代の女性・P氏と、テントを訪れる高齢女性・Q氏、そして、元沖縄県知事・大田昌秀氏が理事長を務める大田平和総合研究所の職員・Z氏だ。

本来なら、彼らの意見を事細かに報告したいところではあるが、それはまた別の機会に譲り、本稿では、彼らの発言を紹介しつつも、あくまで私自身の「主観」を書いてみようと思う。

なお、今回の沖縄取材は、津田氏と津田氏のアシスタント・I氏、福島原発事故の際にNHK・ETV特集『「ネットワークでつくる放射能汚染地図 ~福島原発事故から2か月~』に関わった独協医科大学准教授の木村真三氏、同氏の絵画の先生である「R先生」の5人で動いた。

「結局サヨクが集まってサヨクに取材しただけだろ」と言うならば言え。あなたたちのそんな甘い発言なんてオレにはどうってことない。オレはもはや沖縄について語る資格は一切ないと悟ってしまったのだから。

今回の取材の最大の収穫は、「素人が扱ってはいけないイシューがある」「専門家及び当事者に任せよう。外野は安易に発言してはならない」ということを実感できたことである。沖縄を左と右が勝手に係争の材料にしている今、沖縄問題については専門家と当事者に返すべきである、というのが私の結論だ。

だから2月19日17:30、那覇空港で津田氏、木村氏、I氏と別れる時、恥ずかしながら涙をこぼしてしまった。そこには「右」も「左」もなかった。ただ単に、モノカキとしての自分の薄っぺらさを思い知ったとともに、同行した4人(R先生は先に帰っていた)に対して純粋な感謝の気持ちを抱いたからであった。

冒頭のツイートにも見られるように、私はこれまで、沖縄についてあまりにも軽々しい発言をしてきた。しかし、ここまで剥き出しの状態で「安保」や「中国の脅威」が日常の中に存在するエリアが、日本の他の都道府県にあるだろうか……。

普天間基地に配備されたオスプレイ。沖縄国際大学の会議室から撮影