Photo by Gettyimages
政治政策 国際・外交 アメリカ
トランプ政権の屋台骨を揺るがす「5人の弁護士」に注目せよ
トンデモ法曹から目が離せない【後編】

サリー・イエーツ司法長官代理の更迭、次期労働長官に指名されたアンドリュー・パズダーの指名辞退、続いて大統領選挙中のロシアとの接触が明るみに出た司法長官ジェフ・セッションズも辞任の危機に瀕している。

トランプ政権の屋台骨を揺るがすこれらの事件に共通するキーワードは、「弁護士」だ。東大法学部を主席で卒業、財務官僚を経てハーバード・ロースクールを修了、アメリカで司法試験に合格した経歴をもつ山口真由氏は、「トランプ政権の“次なる火ダネ”もやはり弁護士だろう」と指摘する――。

前編【弁護士に注目するとトランプ政権「真のキーマン」が見えてくる

前編で述べたとおり、アメリカ法曹界は厳しい格差社会で、ブッシュ政権やオバマ政権の中枢を占めた弁護士たちは、いずれもその格差社会を勝ち上がってきたスーパーエリートたちばかりだ。そして、そのエリート弁護士たちをはじめとするエスタブリッシュメント(支配者)層に対する不満が、トランプ大統領当選の原動力となった。

トランプが政権の重要ポストに配置した弁護士・裁判官たちの顔ぶれを見ると、従来のエリート路線とはまったく異なることがわかる。そこには、トランプの「ねらい」とその危うさがハッキリと見て取れる。

①中東の火に油を注ぐ過激な弁護士

駐イスラエル大使候補のデイビッド・フリードマン弁護士。語弊を恐れず率直に言えば、相当の危険人物である。イスラエル・パレスチナ問題について、かなり極端な意見を持っている。

フリードマンの法律家としての専門は「倒産法」だが、ライフワークとも言えるイスラエル問題のほうが、彼の主要な関心事のようだ。

駐イスラエル大使に指名されたデイビッド・フリードマン弁護士〔PHOTO〕gettyimages

父親はユダヤ教の有力な宗教的指導者で、レーガン大統領からランチに招かれる栄誉にあずかったこともある。若いころのフリードマン自身も、政治家になってユダヤ教のために身を捧げようと決意していたという(「ビジネス・インサイダー」2016年12月27日付)。

フリードマンは、イスラエル国土の拡張を狙う対パレスチナ強硬派のなかでもとくに強硬な意見の持ち主だ。「第二次世界大戦でナチスに協力した裏切者のユダヤ人よりずっと悪い」と、穏健派を口汚く批判して炎上した過去がある(「ニューヨーカー」2016年12月16日付)。

とはいえ、「極悪非道」という表現はちょっと違うかもしれない。フリードマンは、障害を持つイスラエル人のために数千万円単位の寄付を行うなどの寛大さも持ち合わせている。ただ、その寄付金がイスラエル人以外の民族に使われることには、強烈な抵抗感を示す。多様性に対する寛容さはないのだ。

フリードマンの任命についてはいまも逆風が吹き荒れているが、固い絆で結ばれたトランプは、あくまでフリードマンを擁護するだろう。なぜそう断言できるのか。

それは、少なくとも2001年から15年以上、カジノ運営に行き詰まった失意のトランプを、フリードマンが弁護士として支え続けてきたからだ。

フリードマンの父親が亡くなったとき、トランプは彼を元気づけるためだけに、吹雪のなかを3時間ドライブして駆けつけたというエピソードもある(「フォワード」2016年12月16日付)。

そんな深い絆でトランプと結ばれたフリードマンの駐イスラエル大使就任が決まれば、中東情勢は一気に不透明感を増すだろう。

 

彼は大使館をテルアビブからエルサレムに移すと言っている。なかば武力によってイスラエルに併合されたこの都市を首都と認めることは、武力併合を国際的に容認することになる。パレスチナはじめイスラム教徒を刺激して、ただでさえ不安定なこの地域のバランスを一気に壊してしまいかねない。

エルサレムで起きたパレスチナ人の自爆テロによって、11人のイスラエル人が犠牲になった2002年、フリードマンはエルサレムを自分たちの手で守ることを決意して、この地に自宅を購入した。いまでも、忙しい弁護士業の合間を縫って、ユダヤ教の祝日はエルサレムの家まで足を運んでいる。この街に対する彼の思い入れは、それほどに強いのだ。