ライフ

失敗を「たまたま不運だったから」で済ませては絶対にいけない理由

ヒューストン大教授が説く「立て直す力」

TEDトーク「傷つく心の力」で注目の著者、ヒューストン大学ソーシャルワーク大学院研究教授ブレネー・ブラウンの『立て直す力』が日本で発売された。

「絶対に失敗しない」というのはかっこいい。だが、ビジネスや日々の暮らしでは、「失敗しない」よりも「失敗しても立て直す」術を知っていたほうが、現実的だし役に立つ。

では、どうすれば失敗からリカバリーできるのだろう? 

ブレネー・ブラウンは「自分を立て直し、状況を改善するには、まず失敗を受け入れることが大切だ」と述べている。ブラウン教授によれば、人にはそもそも失敗を直視せず、都合よくストーリー化してしまう性質があり、それが問題だという。

「どうせ私はダメ」「最初からうまくいかないと思っていた」という具合に、失敗をおさまりのいい話として片づけてしまうのだ。それには明確なエビデンスもある。なんと脳科学も関係していたのだ。

傷ついた痛み、怒り、憤り、苦しみについてわたしたちはどんなストーリーをつくるのか。自分自身に語っている筋書きを意識しよう。

人は、自分の都合のいいストーリーを作ってしまう

わたしたちは物語を紡ぐように生まれついている。客観的なデータなどなくても、かまわない。必要にせまられれば――とりわけ傷ついている時には――大急ぎでストーリーをつくってしまう。それがわたしたちの原始的なサバイバル術だ。人は、意味をこじつけて辻褄を合わせ、手っ取り早くほっとして安心感を得られるようにする生き物なのだろう。

だからこそ、そのストーリーを自覚し、点検するのは、勇敢な行動だ。真実を知ることで安心感を手放し、弱さがさらされて心もとない状態になることを覚悟しなくてはならない。

神経学者で作家のロバート・バートンによれば、わたしたちがパターンを認識してそれを完成させると脳はドーパミンという報酬を与えるそうだ。

ストーリーはパターンである。始まり――中間――おしまいという物語のパターンを認識すると、脳はすっきりさせた褒美をくれる。かならずしも内容が正確である必要はない、ストーリーという形さえ整っていればいい。

真実を知るには未知の領域に踏み込んで自分の弱さをさらすリスクを負うことが必要なのに、脳のご褒美はそれとは逆のほうへとわたしたちを誘導していく。

 

バートンは「わたしたちは否応なしにストーリーをつくり、不完全なストーリーであっても容易に受け入れ、同調しがちである」と述べる。さらに中途半端なストーリーであっても「そのおかげで辻褄があえば、ドーパミンという『褒美』をもらえる――どれだけ不完全で、まちがいだらけのストーリーであっても」と指摘している。

わたし自身、なにかに傷つくと「どうせわたしはダメ」というシナリオに逃げ込む。これは長年履き慣れたジーンズみたいに落ち着きのいい筋書きなのだ。不信感が湧いてくると、条件反射のように「どうせわたしはダメなんだ」と思ってしまうし、誰のせいだ、と犯人さがしを始めるのも毎度のこと。なにかがうまくいかない、嫌な感じ、不利な情勢だと思うと、誰かのせいにしたくなる。

そしてたちまち、自分に都合のいいシナリオをつくってしまう。わずかな事実と想像力で自分の気持ちを満たすための辻褄合わせをしているのだ。