歴史

海の向こうから日本を見てみる〜「極私的」な日朝関係史

ある韓国女学生の静かな反論
高田 貫太 プロフィール

「私は、高田さんの考えは逆だと思います。韓国で、愛国主義的な施設がたくさんつくられるのは、ああいう施設で国民をまとめなければ韓国という国が成り立たないと、政府が考えているからで、本当はそれだけ韓国人はバラバラなのです。

逆に私たちから見ると、日本人は普段は穏和なのに、何か事があって上の人が右向け右と命ずると、一斉にザっと右を向いてまとまるじゃないですか」

ここで彼女の見方の是非を論じようというのではない。私は彼女の話を聞いた時にはじめて、ある事がらをまったく別の視点から考える必要性を実感したのだった。

そして、この実感を研究に活かせたら、と思いめぐらせ、日朝関係史の立場から「倭」を検討したらどうなるか、という本書へいたる着想を得たのだった。

この後輩が今の妻である。現在でも二人の間では日韓をめぐる様ざまな意見の違いがあり、それが私の研究の原動力にもなっている。

最後に一言。歴史を学ぶことはボートを漕ぐようなもの、と聞いたことがある。人びとが未来へ向かうためには、今までの歩み(歴史)をしっかりと見つめることが必要だ、という意味合いだろう。

日朝関係史についても同じことだ。互いのより良い関係を未来へとつなぐ糧に少しでもなればと願いつつ、これからも研究を続けたい。

ただ、妻だけが知ることだが、私はボートを漕ぐのが下手である。

読書人の雑誌「本」2017年3月号より