photo by gettyimages
地震・原発・災害

未だ見つからない遺体と、残された家族が直面する厳しい現実

ルポ・東日本大震災から6年

2587人の行方不明者

「津波で流された兄の遺体は、まだ見つかっていません。最初の頃は『なんで兄だけが』って思ってました。けど、年を経るにつれていろんな形でちがう苦しみがわくようになった。

『俺が悪いことをした罰なのかな』とか『兄が俺のことを怒っているんじゃないか』とか『兄は何かが無念で帰ってこないんじゃないか』とか……。時は心を癒してくれるなんていいますが、嘘ですよ。余計に苦しみが大きくなるだけです」

東日本大震災から6年が経った。死者は19475人、行方不明者は2587人だ。行方不明者1人につき10人の身近な親族がいるとすれば、25000人以上の人々が、未だに親族の遺体を見つけられずにいるのだ。

私は震災の発生直後から被災地の取材をし、岩手県釜石市の遺体安置所を舞台にした『遺体 震災・津波の果てに』(新潮文庫)という本を上梓した。以来、あの当時、遺体安置所に集まった人々に何度も継続して話を聞いてきた。

震災から6年目の現在、行方不明者の家族について書きたい。

photo by gettyimages

遺品を骨壷に

いま、被災地で遺体が新たに見つかることはほとんどない。たとえば、岩手県の釜石警察署によれば、同管轄内で人の形をした遺体が見つかったのは、震災の年の8月に発見されたのが最後だ。

現在、見つかるとしても骨の一部だろう。実際に工事現場や、海辺で骨の一部が見つかり、「被災者の一部ではないか」と言って警察に通報が届くことがあるという。だが、その大半が動物の骨なのだそうだ。

それでも警察署では毎月の月命日(11日)には遺体捜索をしている。

 

遺族の1人は次のように語る。

「今更、遺体が見つかるはずがないんですよ。でも、警察が捜索をしてくれることで、まだ向き合ってくれているんだって思える。一方で、税金の無駄遣いをしているんじゃないかとか、無駄な仕事をさせられているんじゃないかっていう声が上がる不安もあります。それでもやってくれる警察には頭が下がりますよ」

警察の遺体捜索のほか、遺族の心の支えとなっているものがもう1つある。漁船による底引き網の漁だ。被災地にあるお寺・仙寿院の芝崎惠應住職は次のように語った。

「ご家族は、遺体が海に流されて底に沈んでしまっていると考えている方も多いです。そこで底引き網の漁がはじまれば、カレイなんかと一緒に骨が出てくるんじゃないかと期待している。彼らにとって一つの希望なんです」

私が芝崎住職に会ったのは、『遺体 震災・津波の果てに』の取材の最中のことだった。

住職は震災後、自らの寺に大勢の避難者を受け入れる一方で、遺体安置所や火葬場で読経ボランティアを行い、行政が出した土葬案に真っ向から反対。遺体安置所の閉鎖後は、身元不明の遺骨などをお寺に引き取り、多くの遺族の悲しみに寄り添ってきた。

その経験からこう続ける。