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「空き家大国ニッポン」のゾッとする近未来〜首都圏でさえこの惨状…

無計画な開発の果てに
藻谷 浩介,野澤 千絵

野澤 問題の根っこは無計画な都市計画にあります。

人口減少社会において、「ウチのまちだけは人口を増やしたい」という市町村が、新しい住民を呼び込むために、本来は市街化を抑制すべき市街化調整区域の開発規制を過度に緩和して、新規の宅地開発にゴーサインを出している。

で、結局は、近隣自治体同士での人口奪い合い合戦となる。

藻谷 山梨県に昭和町という町があります。ここは農地の住宅地化を積極的に進めた結果、全国有数の人口増加率を誇っています。バイパス通りに高速道路のインターチェンジも、工業団地もできた。ところが、車で15分ほどで甲府に着くはずなのに、いつも渋滞しているから30分でも着かない。

一方、甲府から電車で20分程度の甲州市は、人口減少が急速です。比べてみれば、昭和町のほうが素晴らしいように見えますよね。が、人口増加の中身をつぶさに見てみると、昭和町のほうがまずい状況なのです。

野澤 将来的にどんな問題があるんですか?

藻谷 いや、すでにもうヤバイ。昭和町ではこの5年間で、0~14歳の子供人口が150人増え、生産年齢人口(15~64歳)も750人増えています。それぞれ5%増と6・4%増で、全国有数です。「だったらいいじゃない、現役世代が増えて住民税収も増えるじゃない?」って思うでしょう。

 

野澤 そうですね。

藻谷 ところが、昭和町の総人口は1850人増えているんです。0~14歳が150人、15~64歳が750人の増加ですから、差し引き65歳以上が950人増えているのです。

野澤 つまり、高齢者だけが異常に増えているんですね。

藻谷 子供が5%増、現役世代が6%増、それに対し高齢者は32%増です。福祉関係の費用増はとても深刻でしょう。

なぜこうなったのかと言えば、40年前から乱開発をせっせとやってきた結果。当時30代前後で昭和町に流れ込んできた人たちが、いま続々と65歳を超える高齢者になっているのです。

人口を増やそうとして若い世代を呼び込むと、数十年後には高齢者の大激増に見舞われる。総人口だけを見て増えていると安心するのは大間違い。住民の加齢をまったく考えていない都市計画の先に待つのは、財政破綻です。

想像を絶する「家余り時代」に

野澤 東京圏でも人口を増やすために、自治体があの手この手で都市計画規制を緩和し、郊外の農地エリアの開発や、都心のタワーマンション建設を許容していますが、これも同じ状況を生むことになりますね。

藻谷 首都圏の苦境は昭和町どころではありません。いわゆる世間の常識とは逆ですが。確かに「若者の流入が加速する東京」とも言われるように、東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏一都三県の人口は最近5年間に51万人増えました。うち42万人が、首都圏外から流れ込んできた現役世代です。

ですが総人口はどうでもいい。生産年齢人口は増えているか、高齢者は増えていないのかが、経済や財政には重要なのです。

最近5年間の首都圏には生産年齢人口42万人が流れ込んできたと言いましたが、それではこの間に首都圏の生産年齢人口は、結局何人増えたでしょうか?

野澤 45万人増くらいですか。

藻谷 答えは75万人の減少です。

野澤 えっ。減っているんですか?

藻谷 そうです。その一方で首都圏一都三県では、この5年間に、65歳以上の住民が134万人も増えたのです。

野澤 134万人……。

藻谷 さらに、そのうち80歳以上だけを取り出すと52万人の増加です。この5年間で総人口が51万人増、うち80歳以上が52万人増ですから、つまり増えたのは80歳以上だけで、79歳以下は減っている。高度成長期以前に上京した若者が加齢した結果ですが、昭和町よりもはるかに激しい高齢化です。

野澤 これも目先の人口増加ばかりを追って都市開発を無計画に行ったことのツケですね。現役世代が減って高齢者が増えると、税収が減る一方で社会保障関連のコストがどんどん膨らむことになる。自治体にとっては深刻な危機です。