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バカ売れ!コイケヤ『プライドポテト』「売れない時代に売る」方法

開発担当者とマーケティング担当者が登場

「競合他社はもう見ない」。記者会見で社長はそう断言した。老舗であろうとも安住していてはジリ貧なだけ。合理化が求められる時代にあえて逆を行く。ヒット商品のヒントは創業時の「原点」にあった。

社長みずから命名

「『プライドポテト』は、まさに社運をかけた商品だと認識しています。これまでも多くのお客様に湖池屋のポテトチップスは好評を頂いておりますが、競合商品も多い中で、改めて弊社の強みは何だろうと考えてみました。

その中で、やはり『味へのこだわり』はどこにも負けないと確信したのです。湖池屋ならではの、どこにもない味を追求しようと、原材料から製造工程まですべてを見直して、湖池屋のポテトチップスの原点に戻った商品となりました」

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大手菓子メーカー「湖池屋」の佐藤章社長(57歳)は、本誌に力強くそう語る。昭和33年創業の老舗が勝負に出た。そして賭けに勝った――。

同社が発売したポテトチップスの新シリーズ、『コイケヤ プライドポテト』がバカ売れしている。

2月6日より3種類が店頭に並んだが、そのうち「魅惑の炙り和牛」が同月14日に、「松茸香る極みだし塩」が20日には、予想以上の売れ行きで生産が追いつかず、販売休止となった。現在は残る「秘伝濃厚のり塩」のみが販売されている。

「社内にも見本がワンセットあるだけです。1ヵ月分を1週間足らずで売り切ったということになります。通常なら新商品は出荷直後に売り上げが上がり、徐々に落ち着くのですが、プライドポテトに関して言えば、下がらずに上がり続けたということになります。

売り上げ幅を想定して計画的に生産をしていたのですが、完全に予想のはるか上をいっています」(同社広報課課長・山口直哉氏)

消費が冷え込むこの時代においても、ポテトチップス市場は拡大を続けている。日本スナック・シリアルフーズ協会の統計によれば、国内のポテトチップの出荷額は、'04年の990億円から順調に伸び続け、'15年には1606億円となっている。

「堅い食感のタイプや、わさび味などの多種多様なフレーバーの新商品が発売され、従来のファミリー層だけでなく、若い女性やお酒のツマミとして壮年男性にも客層が広がっていったんです」(食品業界紙記者)

ただし国内のポテトチップスは大手スナック菓子メーカー「カルビー」がシェアの7割を占める。湖池屋は約22%で大差をつけられて、常に2位に甘んじてきた。

 

湖池屋の佐藤社長はキリンビール出身。キリンビバレッジに出向し、缶コーヒー「FIRE」や「生茶」、「アミノサプリ」などのヒット商品を生み出し、業界では伝説のヒットメーカーと呼ばれた人物だ。キリン本体の取締役常務執行役員を務めた後、'16年3月に退任して湖池屋に招かれ、同年9月に社長に就任した。

『プライドポテト』は佐藤社長が「理想のポテトチップスとは何なのか」という素朴な疑問に立ち返ったところからスタートした商品だという。

だが、昨年8月には同社の製品を生産する北海道・富良野の工場が、台風10号の直撃を受けて被災。浸水ですべての電気系統設備が故障していた。

そんな逆境の中でも、湖池屋は着実に反転攻勢を進めた。前出の業界紙記者が語る。

「湖池屋は昨年11月に、ロゴをはじめ企業イメージの大刷新を図りました。その第1弾商品が『プライドポテト』です。これまでにない斬新なフレーバーと、片手で楽に持てる小ぶりなパッケージとが相まって、ある程度人気が出るとは思いましたが、ここまでとは思っていませんでした。

こうして潜在的な需要を喚起できたことは湖池屋の底力。シャレの利いた『プライドポテト』という命名は社長の指示だと聞いています。