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政治政策 ドイツ
激動の欧州、ドイツ総選挙で「メルケル帝国」を壊しにかかる男とは
アメリカにも似たジレンマ

「メルケル帝国」に青天の霹靂

今年の9月にドイツでは連邦議会の総選挙がある。CDU(キリスト教民主同盟)のメルケル首相が4期目の出馬を決めたのが去年の11月。

かつてはCDUとSPD(ドイツ社民党)は二大国民政党と言われ、戦後、交互に政権を取ってきたが、このところSPDの没落が激しく、ようやく20%そこそこの支持を保っているという状態が続いていた。党首は、これまた人気のないガブリエル氏。

また、右派の 新党AfD(ドイツのための選択肢)の台頭はしばしば話題になるものの、連立する政党がいないだろうから、いくら票を伸ばしても与党になる可能性はない。そういう意味では、AfDはフランスのル・ペン氏率いる「国民戦線」とは違う。

というわけで、結局、今度もまたメルケル氏のCDUが勝ち、第2党SPDとの大連立が続くだろう、というのが大方の予想。通算16年、永遠の「メルケル帝国」である。

うんざりな現実だが、メルケル首相に代わるこれといった人物がSPDにはもちろん、CDUにもいない。つまり、選挙戦はかなり退屈になるはずだった。

 

ところが1月25日、状況が劇的に変わった。

SPDの党首が不人気のガブリエル氏からマーティン・シュルツ氏に交代した途端、没落していたはずのSPDの支持率が急上昇! 早くも2月6日、CDUを越えてしまったばかりか、「メルケルとシュルツ、どちらを首相にしたいか?」という質問では、シュルツ氏がメルケル氏を凌いだのである。青天の霹靂とはこのことだ。

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いったいシュルツ氏とは何者か?

1955年生まれの彼は、オランダ国境の小さな市の市長をした後、1994年から今年までずっとEUで活動してきた政治家だ。2012年から17年まではEU議会の議長まで務めた。ただ、EUの政治は国民から遠いので、つい最近まで、シュルツ氏のことを知るドイツ人はそれほどいなかった。

その彼の突然の人気は、エキセントリックなスピーチに依るところも多いのではないか。この1ヵ月、拳を振り上げて怒鳴り続ける演説を見ていると、心ならずもナチのゲッペルスを思い出す。ドイツ人というのは、こういう過激な人物が好きなのだろうか?

そういえば、メルケル首相のスピーチ下手が批判されるとき、「感情的でない」という言葉が使われることがよくある。つまり、興奮が足りない。ドイツで政治家になるには、ヒステリックで攻撃的な演説ができなければならないらしい。