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企業・経営
ゴーン社長「退任」は自動車業界"大再編"の号砲だ【内幕レポート】
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日産のトップ人事は、動き出した再編劇場の序章。トヨタ-スズキ提携の本当の狙い、日産の三菱買収の裏事情、日立に接近するホンダの本音とは――これが自動車業界「仁義なき戦い」の全内幕だ。

ゴーンはより大胆に動く

2月23日、日産自動車はカルロス・ゴーン社長兼CEO(最高経営責任者)が4月1日付で退任して、代表取締役会長に就くトップ人事を発表した。

後任の社長兼CEOには、「後継候補」とされていた西川廣人氏(現共同CEO)が順当に就くが、この人事にはゴーン氏の巧みな狙いが透けて見える。

「ゴーン氏は日産のほか、仏ルノーの社長兼CEOと三菱自動車の代表取締役会長も兼任しているが、3社の経営トップ、特に執行のトップであるCEOを2社で兼任することは利益相反につながる恐れがあると一部で指摘されていた。

特に三菱を買収以来そうした批判が高まる中、今回の人事ではその雑音をかわす狙いがあったのではないか」(競合他社の元役員)

一方、欧州と日本、米国に生活基盤があるゴーン氏は多忙を極めるが、今回の人事で日産の執行面を西川氏に譲ることで、負担を一部軽減できる。

「しかも、西川氏はゴーン氏に最も忠誠を誓った日本人。ゴーン氏の意向を忖度しながら動くタイプで、経営者というより秘書に近い。ゴーン氏には『傀儡』としてうってつけの後継者で、権力基盤の構造は実質的には変わらない」(日産OB)

詳しくは後述するが、ゴーン氏は世界1位の自動車メーカーになるという野望を持っている。

そのため、今回の人事で余裕ができたゴーン氏は、野望実現のためにこれまで以上に買収戦略に動き、大胆な業界再編を仕掛けてくるのでは――業界関係者の間ではさっそくそんな声が上がり出した。

 

実際、AI(人工知能)や自動運転技術の開発をめぐる競争が激化し、米グーグルなどの強敵も続々と新規参入してくる中、流れに乗り遅れれば巨大企業であっても淘汰されるのは必然。

巨大な恐竜が気候の変化に対応できずに絶滅したことにもたとえられるように、世界の自動車メーカーがいま、大再編「前夜」を迎えようとしている。

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「2000万台時代」の到来

2月11日、静岡県湖西市にスズキ会長の鈴木修氏の姿があった。この日は、トヨタグループの始祖、豊田佐吉翁生誕150年記念式典が開催。鈴木会長はこの式典に、「来賓」として招待されていた。

「何はともあれ、おめでとうございます」

当日は、トヨタの豊田章一郎名誉会長、豊田章男社長らも出席。鈴木会長はそんな豊田家の面々を前に登壇すると、祝辞を述べる役を務め、両社の「蜜月ぶり」をアピールして見せたのである。

この式典から遡ること5日前の2月6日、トヨタとスズキは、業務提携に向けた覚書を締結したと発表した。

すでに昨年10月、豊田章男社長と鈴木修会長が共同記者会見して提携する方針を表明していたが、これからは正式に交渉に入る――つまり、両社の「連携」を深化させることを明確に示した形である。