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香港トップは誰になるのか? 返還から20年、ここが大きな分岐点だ
番狂わせか、香港の「中国化」か

北京が推す林鄭月娥が優勢だが…

香港のトップである行政長官を選ぶ選挙が3月26日に迫っている。1日に締め切られた立候補届け出は3人だが、レースは事実上、林鄭月娥(キャリー・ラム)と、曽俊華(ジョン・ツァン)の2人に絞られたと言っていい。

香港が一国二制度下に入ってちょうど20周年。2014年に世界を震撼させた雨傘運動後、初めて行われる行政長官選挙という節目を迎えた香港にとって、今回の選挙は「香港」か「中国」を選ぶ大きな分岐路に香港が差し掛かっていることを意味している。

「香港」か「中国」かが争点だというと、香港はすでに中国の一部になっており、矛盾する問いかけのように思われるかもしれない。ここで指摘する「香港」か「中国」かという問題設定は、高い独自性を維持した香港であり続けるか、政治もビジネスも中国に飲み込まれた香港になるのか、という問題であり、「一国二制度」の実質的な有効性を大きく左右するのである。

林鄭月娥(キャリー・ラム)photo by gettyimages

林鄭月娥も、曽俊華も、香港の政治エリートであり、行政能力には定評がある。林鄭月娥は現政権のナンバー2(政務担当)、曽俊華はナンバー3(財政担当)で、ともに選挙のために職を辞している。

2人とも基本は「建制派」と呼ばれる親北京政府のグループに属する人材だ。本来ならば、北京の中央政府も、どっちに転んでもよいとばかりに、じっくりと腰を据えて形勢を見ていればいいはずなのだが、早くも、慌ただしく「介入」を繰り返している。

 

それは、とりもなおさず、雨傘運動をきっかけに本格的に吹き出した香港の対中国のマイナス感情が、選挙に「暗い影」を落としており、行政長官選挙の成り行きに北京が極めて強い危機感を抱いているからである。

現在のところ、北京の中央政府は、かなりはっきりと、林鄭月娥への支持を打ち出している。共産党ナンバー3の張徳江・全国人民代表大会委員長は、香港の有力な選挙委員たちを深圳に呼び出し、中央が支持する候補者は林鄭月娥であるとはっきり述べたとも言われている。

また、国務院香港マカオ弁公室主任の王光亞は、メディアの取材で香港のトップには4つの基準が必要だと述べた。それは「愛國愛港、中央信任、有管治能力、港人擁護」で、日本語に訳すると「国を愛し、香港を愛する。中央から信任される。統治能力がある。香港人が支持する」。

このうち、「国を愛し」と「中央から信任される」という点で、林鄭月娥のほうが香港の次の指導者にふさわしく、曽俊華は適切な人材ではない、という中央の意向が、間接話法で香港に伝えられているとみていいだろう。

中央が曽俊華に関するスキャンダルを握っているといった類の風説も流されており、曽俊華陣営に支持が流れない揺さぶりはかなり激しさを増している。