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障がいの有無を超えるために〜全員が力を発揮できるルールとは

まさに社会と同じこと

2月25日、広島県福山市のローズアリーナで行われた「第6回ユニバーサルフロアホッケー中国四国大会 ~エフピコ杯~」に行ってきました。

フロアホッケーはスペシャルオリンピックス(*1)の公式競技の一つです。木製のフロアで行われ直径20cmの穴の空いたパックをスティックで操り、相手側のゴールに入れて勝敗を競います。1チームは最低11人~最大16人までで、ゴールキーパーを含めた6名のプレイヤーがコートで競技を行います。

今回の大会ルールでは、3分の1以上を知的障がいの選手で構成することになっています。

このフロアホッケーに力を入れているのが、今回の大会名にもなっている株式会社エフピコ(以下エフピコ)です。スーパーに並ぶ食品用トレーの製造などが業務のエフピコは、障がい者374名を雇用しています。障がい者雇用率は14.5%です。

障がいのある社員と障がいのない社員は、以前は職場も別々でほとんど交流はありませんでした。障がいのある社員が主に働いている工場でも、障がいのない社員はそれを管理する立場と分かれていました。そんな中、同社がスペシャルオリンピックスに関わり、スペシャルオリンピックスの理事長だった細川佳代子氏と出会いました。

同社の佐藤守正社長に、細川氏は「障がいの有無を理由にして別々に働くというのは不自然」「障がいの有無を超えたユニバーサルスポーツであるフロアホッケーをぜひ始めてみてください」と勧めました。

それを受けてエフピコのフロアホッケー活動が始まりました。2010年のことです。障がいのある社員とない社員が一緒にプレーをするようになると、うまくなりたいから、勝ちたいから、チームをどうするのか、作戦はどうしよう……と、自然にコミュニケーションが生まれていきました。

 

フロアホッケーで変わった職場

そして、エフピコの職場は変わりました。「それまではどう接していいか分からなかった。でも、自然に話ができるようになった」「一方的に指示するものだと思いこんでいたのが、対話ができるようになった」「なんだこんなに簡単なことだったんだ」と。

現在、フロアホッケー活動は、全国のエフピコグループに広がりました。約600名(障がいのある従業員約180名、障がいのない従業員約420名)が日ごろの練習や大会に向けての活動をしています。

今回、熊本県から出場していた特別支援学校2年生の男子選手の話です。エフピコのチームは、彼の目にはまぶしく映っていました。とてもかっこよく、憧れの存在です。

卒業してエフピコに入社して社会人としてフロアホッケーをするのが、彼の夢だといいます。大会に出かける前に「エフピコの会社の人がたくさんいるこの大会で、注目してもらえるようなプレーをする」と担当の先生に言っていたそうです。

「働く人がそれぞれの力を発揮できるルールをつくるのが大切。フロアホッケーもチーム全員がそれぞれ個々の力を発揮できる素晴らしいルール。社会と同じだとここに来ると感じることができます」

これは地元の小林史明衆議院議員の開会の言葉です。この言葉の意味をまさに肌で感じることができた有意義な一日でした。

*1 スペシャルオリンピックス/知的障がいのある人たちに様々なスポーツトレーニングとその成果の発表の場である競技会を年間を通じ提供している国際的なスポーツ組織
 
伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。