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NHKの「BPO勧告への反論」は報道機関の自殺行為である

小保方晴子さん代理人からの警告

STAP細胞について取り扱った『NHKスペシャル』に対して、BPOは「名誉棄損の人権侵害があった」と認め、NHKに対して初となる「勧告」を行った。NHKはこの決定への不満を隠さず、ニュース番組内で「反論」を行ったが、小保方晴子氏の代理人を務める三木秀夫弁護士は「NHKの態度はあまりに身勝手で、突き詰めれば報道の自由への自殺行為だ」と指摘する。

NHK初のBPOによる「勧告」

小保方晴子氏は、2014年7月27日に放送されたNHKスペシャル『調査報告 STAP細胞 不正の真相」で、事件の犯人を追うような偏向した番組構成によって小保方氏による「ES細胞窃盗および捏造」を視聴者に印象づけられ著しい人権侵害を受けたとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)に申し立てをしていた。

これに対し、BPOの放送人権委員会は、NHKからの反論も受けて双方から十分にヒアリングした上で、今年2月10日に「名誉棄損の人権侵害があった」とし、また制作過程での取材方法に行き過ぎがあった点に「放送倫理上の問題」があると認定した。さらに、番組全体に対して、科学報道番組にふさわしくない演出や、申立人に対する印象を殊更に悪化させるような箇所も見られるなどの指摘も行った。

その上で、NHKに対して、本決定を真摯に受け止めた上で、「本決定の主旨を放送」するとともに、過熱報道での取材・報道のあり方について局内で検討し、再発防止に努めるよう求める「勧告」を行った。9名の委員のうち7名の多数意見での結論であった。

名誉棄損での人権侵害での勧告は、BPOの判断では最も重く、BPO発足以来8度目、NHKとしては初めてである。

 

私は申立人(小保方氏)の代理人弁護士として、BPOに対し、この番組はおよそ科学報道とは思えない演出や、申立人に対する印象を悪化させるような意図的な構成がされていること、特に申立人があたかも「ES細胞を『盗み』、それを混入させた細胞を用いて実験を行っていた」と断定的なイメージの下で作られたもので、極めて大きな人権侵害があった」と主張した。

今回の決定は、私的なメールの公表や許諾なく実験ノートを放送したことなどについては「放送倫理上問題があったとまでは言えない」とされた点もあって、全面的に満足とは言えないものの、「報道の自由」に対する配慮も必要であった点を踏まえれば、訴えの最重要部分が肯定されたことをもって、有意義な勧告であると考えている。

NHKが引き起こした「二つの問題」

しかし、NHKはこの勧告が出た直後にも、2つの重大な問題を引き起こしたことを指摘したい。

まずNHKは、その日の夕方7時のニュースでBPO勧告を受けたことは伝えたものの、驚いたことに「表現にも配慮しながら制作したものであり、人権侵害ではない」などという反論を行った。さらにその直後に、詳細な反論をホームページに掲載し、その中で「BPO決定に2名の少数意見があった」という点を強調した。

私はこの少数意見には事実誤認等の問題があるとは思っているが、それを横におくとしても、その少数意見でさえ「人権侵害とまでは言えないものの、放送倫理上問題がある」というものであった。

しかし、NHKはそれには言及しないまま、「一方で9人の委員のうち2人が、人権侵害があったとまでは言えない、名誉棄損とするべきものではないと決定とは異なる意見を出しました」と告げ、あたかも本件番組に何ら問題がないとする委員もあった、と思わせるような悪質な印象操作がなされている。「番組の中の事実関係に誤りはありません」と、あたかも自分たちの行った放送は真実であったと念押しまでしている。

これでは、BPOが求めた「本決定の主旨を放送しなさい」という勧告に反するだけでなく、NHKは申立人に対して再度の人権侵害をしたものと考えざるを得ない。反省の色を見せないまま、まるでBPO勧告を無視すると宣言しているようにもみえる。

「本件放送による名誉毀損によって申立人の受けた被害は小さいものではない」と断じたBPOの勧告に対して「人権を侵害したものではない」とするNHKの人権感覚の鈍麻には、改めて驚くしかない。