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「午後3時飲み」を楽しめる東京の名店ベスト10

お先にごめん!愉悦の極み

落語家の林家正蔵さんと酒場雑誌『古典酒場』を創刊した倉嶋紀和子さんが、「午後3時」から飲めるとっておきの名店をご紹介!

3時から飲むなら朝飯は抜け!

林家 3時から酒を飲むなんて愉悦の極み。もう朝から、ウキウキしちゃってコンディションを調えます。朝飯も昼飯も食べません。すきっ腹に飲みたいからです。

倉嶋 キューっと喉元から胃に落ちていく時がこの上ない幸せ。

林家 おっしゃる通り。「体にいいじゃないか」って錯覚しちゃうくらい気持ちがいい。

倉嶋 まだお仕事中の方に申し訳ないと思いつつもやめられない。3時飲みは背徳の快楽ですね。

林家 堅気や現役の人に遠慮しながらね。プレミアムフライデーで早くから飲める人も増えるでしょう。

でもやっぱり、今日の対談場所になっている赤羽のまるます家みたいな良い店で飲みたい。週刊現代のグラビアでも紹介されていましたね。

倉嶋 ここは朝9時から営業している居酒屋で、若女将考案の「ジャン酎モヒート」がいいですね。ハイリキにライムとミントを入れるんですが、それがすごく爽やかで、お店の居心地も良いものだからグビグビいけちゃう。

林家 名物の鰻や鯉を肴にね。この店の雰囲気はどこか新宿末廣亭に似ているなって思うの。味のある佇まいやお客さんのしみ込み具合がそっくり。

赤羽界隈は戦前から工場が多かった土地で、夜勤明けの人が飲めるようにって朝からやっている店に困らない街なんです。仕事上がりにしみじみと飲む様が、寄席で笑ったり涙ぐんだりするお客さんと重なります。

倉嶋 客筋がいいので場が荒れません。そこはお店がお客さんとの距離感を大事にしていることも大きいと思います。悪い酔い方をしている人は店に入れませんし、一方で一人で飲んでいるといい塩梅にご接客くださる。

林家 それでいて決して客に踏み込まない。間合いの心地よさで行く店が決まることもあります。

 

蕎麦屋で杯を傾けて志ん朝を偲ぶ

倉嶋 新橋のこひなたも間合いが絶妙なお店です。リタイヤされたお父さんたちがご機嫌に飲んでいるんですが、その中に女の私が一人で入るとやっぱり空気が変わる。それを店のお母さんがうまく馴染むように会話を振ったりしてくれるんです。もちろん、放っておいてほしい時は話しかけてこない。その自然な気配りに救われています。

林家 いいねえ、新橋はリタイヤ組にもやさしい町です。駅の西口にあるニューニコニコにも近辺にお勤めだった方が多くて、OBたちが「ニコニコ会」を作って飲んでいらっしゃる。時折、現役さんが定食を食べに来て、「あ、先輩」なんて声が聞こえてきたりしてね。そんな日常の風景を見ながらキュッとやるのがいいんですよ。

倉嶋 こっちは、ちょっとやさぐれた感じで。

林家 そうそう、明るいうちから一人で飲んでるっていうね。でもね、私の場合、やさぐれすぎるのも嫌なんですよ。つぶれるまで飲んじゃうとかさ。

倉嶋 どこかで一線を引きたいというのはありますね。でも飲みたい気持ちもあるから、いつも心の中で葛藤してしまう。

林家 その点、いつも素敵な飲み方をされるなあと感心させられたのは(古今亭)志ん朝師匠でした。よくトンカツで日本酒を飲んでいましたね。「ビールじゃないんですか」って聞いたら、「おまんまに合うものは、なんだってお酒にも合うんだよ。酒はコメの汁なんだから」って。

その志ん朝師匠とよくご一緒させていただいたのが上野の蕎麦屋・翁庵です。これが気取らない蕎麦屋で。甘辛い油揚げに、といたワサビつけながらキューッと。落語家は縁起商売だから「お稲荷さん」で縁起がいいんだよ。揚げっていうのも「運が上がる」ってね。