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金正男暗殺、マレーシアとインドネシア現地メディアはどう報じたか
実行犯女性2人の正体は?

犠牲者か、工作員か

2月23日午前7時(日本時間午前9時)、インドネシア民放「ブリタ・サトゥ」は朝の報道番組で、マレーシアのクアラルンプール国際空港で北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄にあたる金正男氏(45)が暗殺された事件の特別番組を放送した。

番組は、金正男氏の暗殺事件そのものというより、実行犯の一人としてマレーシア警察に逮捕されているインドネシア国籍の女性、シティ・アイシャ容疑者(25)に焦点を当てたもので「アイシャは犠牲者か工作員か」というタイトルだった。

さらに別の民放も同日午前9時から特別報道特集を放送、そのタイトルは「シティ・アイシャとは一体何者なのか」だった。

 

日本や韓国では暗殺事件の背景や犯人像など事件に直接かかわる報道合戦が繰り広げられているが、このように、事件が起きたマレーシアや実行犯女性2人が関係するインドネシア、ベトナムでは日本とは立場が異なる報道が続いている。

今回の事件の当時国でもあるマレーシアは、当初、単なる北朝鮮籍男性の不審死事件として処理しようとしたが、旅券を照会した在マレーシア北朝鮮大使館の対応ぶりや旅券に記載された渡航歴などから問い合わせたマカオやインドネシア、中国などの関係国、さらに情報機関などから「単なる旅行者」ではないことが判明。国際的な暗殺事件として軍の特殊部隊まで動員する厳重な警戒体制の中での対応となっている。

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この間、ナジブ政権と密接な関係にある中国当局からの情報に基づき「北朝鮮への遺体の返還」を踏みとどまることを政府として決断した。

「マレーシア警察の捜査は信用できない」という在マレーシア北朝鮮大使による不用意な発言にさらに態度を硬化、在北朝鮮マレーシア大使を召還するとともに、容疑者として、事件当日にインドネシアに出国し北朝鮮に帰国しているとみられる男性3人(マレーシアの北朝鮮大使館員)の身柄引き渡しを求める事態となっている。

マレーシアの世論はこうした北朝鮮側の姿勢を受けて急速に「反北朝鮮」に傾き始めており、この一件は、今後の両国関係に暗い影を落としている。

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友好国関係が「悪用」された

暗殺事件が発生した2月13日はインドネシア統一地方選の投開票を15日に控えていたこともあり、また金正男氏の素性や北朝鮮という国の実情にもほとんど関心がないことなどから、インドネシアではほとんど報道されることはなかった。

しかし、実行犯の一人、アイシャ容疑者がインドネシア国籍と判明した時点から内外のマスコミによる報道が一気に加熱、いまや国民の一大関心事にまで発展している。

インドネシアの地元メディアは、金正恩委員長と金正男氏の血縁関係を示す家系図、北朝鮮の権力機構の構図、歴代委員長の素性などを写真や映像、図表を使って丁寧にわかりやすく報じている。

その結果、今回の事件の背景には北朝鮮という国の「恐ろしい素顔」があり、アイシャ容疑者は「国際的な陰謀事件」に巻き込まれた被害者あるいは犠牲者ではないか、という論調が目立っている。