さて、「より長く働けるようにする」ことを目指すとして、今から、「普通の働く個人」に必要なこと、できることは何なのだろうか。

まず、必要をベースに考えるなら、①働く場、②働くスキル、③働ける健康、の3点を確保することが必要だ。

①働く場の確保:会社にはもう頼れない

個人にとって最も気になるのは、例えば75歳まで働くことができる場を確保することができるかどうかだろう。

特別に幸運な会社で働いている場合を除いて、一つの会社に、ざっと50年にわたる期間の働き場所の提供を期待することは難しいだろう。会社は、理屈上永続もしうるし、現実的には短期間で消滅もしうるものだが、一つのビジネス・モデルが50年間有効であり続けるのは、相当に大変なことだ。

また、仮に会社が継続的に好調であったとしても、会社の側で将来も自分を必要とするのかは不確実だ。

現在企業勤めのサラリーマンの場合、途中で役職定年などで収入が下がることがあるとしても60歳までまずまずの条件で雇用され、それ以降は65歳まで大きく条件を下げながら雇用が延長できる、というくらいが現在の勤め先の平均像だろう。75歳には10年足りない。

また、急に仕事の能力が落ちる訳ではないのに60歳〜65歳の労働条件が悪すぎると感じる方も多いだろう。収入面でも大きく下がるし、仕事が簡単なものになったり、仕事をする際の権限が急に乏しくなるなどで、仕事のモチベーションを維持できないケースも少なくないと聞く。

できれば60歳前後から、次に自分に合った「働く場」を確保できるようにしておきたい。

働き方の複線化

仕事のスキルについては後でまた検討するが、60歳以降もできる仕事の場を確保するためには、相当に長い準備期間が必要だと考えておきたい。準備を始めるのに理想的な年齢は45歳くらいではないかと筆者は考えている。

例えば、将来、コンサルタントや「士業」(税理士、社会保険労務士、弁護士など)で独立しようとした場合、仕事に必要な知識を学んだり、制度的に必要な資格を取得したりするための時間がおそらく数年単位で必要だし、独立した際の顧客を十分確保しておかねばならない。

独立を成功させるためには、将来確実な顧客になってくれる人との人間関係をどれだけ持つことができるかが重要だが、こうした人脈作りには時間が掛かる。

本業の会社員としての仕事でできた人間関係は、それが有効な人脈につながるきっかけになる場合があるとしても、多くの場合、会社に依存した関係であって、会社を離れてしまうと無効になってしまう場合が多い。

人脈作りには時間が掛かる。できれば、50代の、経済力と体力のある時期に、将来につながる社外の人間関係を積み上げておきたい。

有効な手段は将来の職種によっても異なるが、比較的広く適用できるのは、社外の興味を同じくする人達を集めて勉強会などの「会」の組織を立ち上げて、自ら幹事を務めることだ。

幹事の雑務を負うことで、個々の会員に対して少しずつではあるが「恩」を売ることができるし、幹事だと会員や外部のゲスト講師なども選べるし、外部講師との交渉の接点にもなるので、会を使って会の外にも自分の人脈を拡げることができる。

もちろん、将来、顧客になり得る人々を集めるような勉強会であれば、自分が無償で知識を提供したり、相談に乗ったりするような種まきも将来のために重要だ。

なお、調査系の仕事をしている人や技術者、あるいはジャーナリストのような自分を知的だと思っている方々は、しばしば大学の教師になりたがるが、これはなかなか狭き門である。

私立大学の専任教官であれば定年が70歳くらいであることが多いし、その後も元気なら元の肩書きを使って仕事ができそうにも思えるが、大学教師は希望者が多く、専任教員のポストを得ることは大変だ。

大学院に通うなどの方法で博士号を取り(応募の条件であることが多い)、さらに条件のいいとは言えない非常勤講師を長く務めるなどで大学に貢献しつつ、コネと言えるような人間関係を作って、さらに空きのポストを待って、教授会で反対されなければやっと就職が叶うといったケースが多い。