週刊現代

このままではアマゾンとセブンイレブンとヤマトが全滅する!

商品はあっても 「運ぶ人」がいない…
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給料が上がらない

普通、労働が過酷になると、給料が上がる。ところが、物流業界では労働時間が長くなっているにもかかわらず、給料が下がるという異常な状態に置かれている。

厚生労働省の調べによると、道路貨物運送業の給与は'99年をピークに減少傾向にある。また、'15年の全産業の年間所得が489万円だったのに対し、中小型トラックのドライバーは388万円。

そのうえ、労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間に対し、中小型トラックドライバーは2580時間と長い。単純計算で時給に換算すると、約1500円。コンビニの深夜バイトと変わらない。

数字の上からも、トラックドライバーの労働は平均的な労働者よりも長時間で安いことが裏付けられている。そんなトラックドライバーが日本の物流の実に9割を担っているのだ。

「アマゾンの荷物1個の配送単価は、何十円といった低価格で抑えられているようです。対価が安いのに時間指定だったり、当日配送だったりと要求が高い。給料が上がるなら喜んでやりますよ。でも安月給のままで、何十円の代金で一日に何度も往復していたらアホらしくなります。

会社の上層部は佐川急便からアマゾンの仕事を奪って売上高が伸びたと喜んでいるかもしれませんが、現場からすると会社の利益しか考えていないとしか思えませんね。ただでさえ、安月給で辞めていく人が多いのに、これ以上人手不足になったら、現場は回らなくなります」(前出・日本郵便社員)

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若い世代がやりたがらない

なぜ、需要が拡大しているのに、給料が上がらないのか。物流業界のシステムを解説するのは、物流コンサルタントでイー・ロジットCEOの角井亮一氏だ。

「配送業者はなぜ人材を確保するために人件費を上げないのか。それは配送料を上げられないからです。たとえば、通販業者の仕事を請け負っている配送業者が人手不足から運賃を上げたいといえば、その通販業者は契約を打ち切って別の配送業者に乗り換えるだけ。

実際、佐川急便が料金の問題で交渉がまとまらず、アマゾンとの契約を打ち切りましたが、その後をヤマト運輸と日本郵便が引き受けて、それで終わりです。アマゾンも多少は配送コストが上がったでしょうが、受けた業者もアマゾンに対応する体制を整える必要があるため、必ずしも収益増になるわけではありません。

運送業は一軒一軒に届ける手間がかかり、規模のメリットがほとんど利かないばかりか、仕事が増えればますます人手不足が深刻化します。給料はそのままで、運送会社も作業の効率化への努力が十分とは言えないため、さらに人材が確保しづらくなる悪循環なのです」

 

人手不足の問題を解決しようとする動きはある。たとえば、ドローンによる無人配送や自動運転技術の向上だ。これによって人手に頼らず商品を配送することが可能になるとされている。

だが――。

「実験は進んでいますが、実用化にはまだまだ時間がかかるでしょう。'20年には自動運転タクシーを実用化すると政府は言っていますが、限られたエリアの専用道での話にすぎません。

自動追尾トラックを高速道路で走らせるのは比較的容易ですが、市街地での自動運転はその100倍も難易度が高いそうです。10年以内に実現するのは難しいでしょう。それまで今の体制で日本の物流が持ちこたえられるかが最大の問題です」(角井氏)

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物流の危機はコンビニ業界にとっても他人事ではない。弁当やパンといった食料品から生活雑貨まで日常生活に必要なありとあらゆる商品が揃うコンビニという業態は、徹底的に効率化されたロジスティクスに支えられてきた。それを牽引してきたのが、業界最大手のセブンイレブンだ。

同社の元社員で、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授の並木雄二氏が解説する。

「コンビニは効率的に物を運べる状況を確保しないと出店できません。'70年当時は一つの店舗に日々70台ものトラックが物を届けていました。それを10年かけ、配送センターに集めて共同配送にすることでトラックの数を減らしてきた。

さらにその後の10年で、様々な温度の商品を一度に配送できるトラックを開発し、一層効率化を進めました。その結果、今は一日10台以下のトラックの数で配送が済むようになり、高い収益性を実現してきたのです」

だが、時代が変わった。人口減少によって、地方部ではどれだけ効率化を進めても、採算が取れない可能性が出てきたのだ。