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不正・事件・犯罪
アパホテルから12億円を騙し取った「地面師」驚きの手口
カネはどこに消えたのか?

鮮やかすぎる手口

凄腕の地面師が逮捕された。

ここ数年、地面師グループのリーダーとして都内近郊に出没、私が把握しているだけで4件の架空不動産売買で約25億円を詐取した。警視庁捜査2課の調べが続けば、さらに被害金額が積み上がるに違いない。

宮田康徳容疑者(54)――。

都内各地で何社も経営するが、その多くはペーパーカンパニー。調査会社の報告書によれば、1985年に大学を卒業して損保会社に入社。不動産業に転じて、99年に会社経営者となり、その後、不動産売買、ホテル運営会社、米ハワイ州不動産会社の販売代理店、医療コンサルタントなどを経営するものの、「各社とも実態把握できない」という。

少なくとも4~5年前からは、グループを組んで「成りすまし犯」を用意、偽造書類等で売買代金を詐取する地面師が本業になっていた。

2月13日の逮捕案件は、墨田区の80代の女性が所有する土地や建物について、各種書類を偽造、横浜市の不動産会社から7000万円をだまし取ったというもの。

この件もだました相手はプロだが、宮田容疑者の名が不動産業界で一躍有名になるのは、東京・赤坂の一等地を舞台に、精力的な不動産買い付けとホテル建設で知られるAPAホテルをだまし、約12億6000万円を詐取した事件からである。

この件は、13年12月、売主に対して損害賠償請求訴訟を起こしたAPAが全面勝訴。判決文によれば、APAの解除権を認めて売主への支払いを命じているが、当然のことながらAPAに至るまでにも売買は繰り返され、資金の多くは費消され、損害は回復していない(後述のようにAPAは回答せず)。責任追及は、警視庁に委ねられた。

 

手口は、鮮やかというしかない。

宮田容疑者らが目をつけたのは、赤坂2丁目の外堀通りの近くにある四角い形状の約120坪だ。当時、駐車場として使われていたが、土地所有者は過去にこの土地を担保に借金をしたことがない資産家だった。

件の赤坂の土地

所有者が住んでおらず無借金――地面師にとっては狙い目である。宮田容疑者らは、13年6月頃から動き出し、APAの仲介業者に、物件購入を持ちかける。

所有者はSY氏だが既に死去。相続したのは、その息子のSS氏とSK氏の兄弟。両氏は、ダイリツ(宮田容疑者が代表を務める上野の不動産会社)に売却することで合意している。ただ、ダイリツは中間登記を省略(登記には登場せず、直接の売主にはならない)し、千代田区のK社に売却するので、APAはK社からの購入になる――。

不動産登記簿謄本上の流れは、SS氏とSK氏がまず相続して所有権登記。それをK社で購入の上、APAに売却する。

全国に200軒以上のビジネスホテルを展開するAPAは、元谷外志雄会長の積極的な拡張戦略で知られるが、全国で物件を取得しているだけに不動産のプロを各所に配備、備えは万全の“ハズ”だった。

赤坂案件では現地調査は仲介業者が行い、建築設計事務所がホテル建設用地としての可否を検討。登記実務は経験豊富な司法書士に委ねられ、社内で検討の末、購入が決定する。

価格は12億6000万円で契約締結日と決済日は、13年8月6日に決まった。

同日午前12時、メガバンクの赤坂見附支店に一堂が会した。大正15年生まれのSS氏(当時87歳)と昭和4年生まれのSK氏(同84歳)、ダイリツ代表の宮田容疑者、K社代表、APAから受任を受けた司法書士。他に、双方から弁護士、司法書士などが立ち会い、売買契約が成立し、APAからK社への支払いがなされ、法務局に登記が申請された。

 

このSSとSKの両氏が、宮田容疑者から依頼を受けた「成りすまし犯」だった。APAサイドは本人確認を住民基本台帳カードで行うが、実は、これが偽造されたものだったのだ。不動産権利書、固定資産評価証明書、印鑑証明書など契約に必要な書類もすべて偽造だった。

契約が成立し、振込が完了した時、数十万円から数百万円で雇われるという成りすまし犯の2人はホッと胸をなで下ろす。宮田容疑者ら地面師グループ(どこまで仲間かは現段階では不明)は、小躍りして喜んだに違いない。

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