このエントリーをはてなブックマークに追加

ミッツが乙武洋匡を
「うらやましい」と思った理由

特別対談【後編】

「不倫騒動が起きた後は、何を考えていたんですか?」「炎上に加担している人は思考停止していてダサい」

ベストセラー『五体不満足』の著者で、コメンテーター以外にも教育者やスポーツライターの側面も持つ乙武洋匡氏。昨年3月に不倫騒動が起き、一時活動を休止せざるを得なかった心中とはーー

歯に衣着せぬ物言いで、メディアに引っ張りだこのミッツ・マングローブ氏がズバズバ斬り込んでいく異色の2人の特別対談後編。

取材・文/田中亜紀子

MITZ meets OTOTAKE: 前編・「お前が言うな!」を覚悟のうえで、それでも僕が言いたいこと


(*前編はこちら gendai.ismedia.jp/articles/-/51033

僕が叩かれた理由

乙武 ミッツさんは仕事とプライベートで、どれくらいスイッチの切り替えをしていますか?

これまでの僕は、わりとスイッチでオンオフの切り替えをしてきたタイプだと思うんです。というのも、『五体不満足』で世間に登場した「乙武さん像」は清廉潔白な聖人君子。

でも、自分がそんなたいそうな人間でないことは自分がいちばんよくわかっているわけです。そのギャップが苦しくて、当初は必死に砕けた自分を出そうともがいていました。でも、そうしたシーンやコメントは、テレビでも雑誌でもばっさりカット。まったく使ってもらえなかった。

なんだ、求められてないのか。だったら、「みんなが求める乙武さん」を演じるしかないじゃないかと実像と虚像のスイッチをつくるようになっていった。

それが、今回、僕がここまで叩かれた最大の要因だと思うんです。なんだ、あいつ聖人君子なんかじゃないじゃないか。ついに化けの皮が剥がれたな、と。ミッツさんの場合、本当の自分とタレント「ミッツ・マングローブ」とのギャップって感じたりしてますか?

Photo by Rana Shimada

ミッツ 本番始まったら声を張るとか、ニコニコするとか、目をぱっちり開けるとか。そういう仕事上のスイッチはありますけど、根本的な実像と虚像をはっきり切り替えるスイッチはないですね。今のところは窮屈な感じもないんですよ。

でも『五体不満足』を出したときの「乙武洋匡像」って、乙武さんがあれを演じてたとしても、自分なわけじゃないですか。あなた自身も、清廉潔白な「乙武洋匡像」が好きだったんだろうと思います。

そうじゃないと、それこそ大学生の頃からメディアで発信していくなんて、とてもできないですよ。そもそもメディアに出始めたのも、自発的に本を書いたことがきっかけだったわけですし。

だから「乙武洋匡像」が好きで、ある意味演じながらメディアに出てらっしゃるんだろうなって思ってました。「乙武洋匡像」が好きで仕事をしているからこそ、途中でその像と、本当の自分とのギャップを窮屈に感じてしまったんじゃないのかな?

年をとるごとに、違う自分の要素や側面が生まれてくるし、環境も立場も変わるのに、「乙武洋匡像」は昔からずっと変わらなかったわけだから。メディアで仕事をしてきた年数が長いから、像を演じることがクセになっちゃってたのかもしれないですね。

乙武 今回の騒動で強く感じたのは、人は誰かを評価するときに、決して立体的には見ようとしない、ということ。本当に一面的に見たがるんですよね。

たとえば僕自身がこれまで語ってきた社会や教育に対する思いには嘘偽りがないし、今も心からそう思っている。一方で、自分に甘く、プライベートがだらしないところも、残念ながら僕の一部だったわけです。どちらも私のリアル。

だけど、今回の報道が流れた途端、「今まであいつが言っていたことは全部ウソだったのか」と。「あいつはマジメ」と決めたらそういう見方しかしないし、「あいつは最低」と決めたら、もう何をしたって最低のレッテルは剥がれない。「白」か「黒」なんですよね。

作家・平野啓一郎さんも「分人」という概念を示しているように、人間には誰しも二面性、三面性があるし、それがむしろ自然だと思うんです。ひとりの人間の中に白と黒が混在して、しかも混ざりあわずに斑になってるのが人間なのかなと。

ミッツ それが「商品価値」なんですよ。第三者がある側面だけを追い求めて、なおかつそこに人々がおカネや時間を使ってくれるだろうという魅力や才能を持っている人に、商品価値は生まれます。だからタレントの周りでお金が回るわけでね。

そこに新たな要素を加えますって言っても、時間はかかりますよね。特にこれが定番だって浸透していれば浸透しているだけ、ちょっとパッケージを変えるだけでも「なんだか前と違う」となって、売上が落ちるし、消費者は戸惑うわけじゃないですか。

逆に私は、少し乙武さんが羨ましいって思っちゃっいました。それは、「え! こんなはずじゃなかった」ってみんなに言ってもらえるくらい、商品価値があったってことですもん。

それが実像だろうが、虚像だろうが、それだけ凝り固まったイメージで、消費されるっていいなって思います。

私らは、結局全部あけっぴろげになることが商品価値になるから、暴きたい神秘性っていうのがないんですよ。表も裏も全部がパッケージングされて売り出されている。そういう売り方しかできないんです。私の商売の仕方からすると、乙武さんのことがうらやましくもありますね。

乙武 てことは、週刊誌で自分のプライベートが取り上げられることにもちょっと憧れあります(笑)?

ミッツ うーん、それは別問題かもね……(笑)。

「膝にくる」ことはないね(笑)

乙武 「商品価値」という話とはズレるかもしれないけど、僕たちも当然、歳をとりますよね。そうなるとまた、みなさんの受け止め方も変わってくる部分ってあるんですかね。ミッツさんは、老後とか考えるようになりました? 僕らふたりとも40歳を越えた。僕は人生を逆算するようになってきたんですけど。

ミッツ 老後も結局、自分の周囲の環境の変化だったりするわけじゃないですか。自分の体にガタが来るってこともあるけど、親の老いや墓守とか、自分が死んだ時にどうするか、そういうことはしょっちゅう同じ人種で集まると話してますね。

みんな芸名で呼び合ってるから、本名を知らない。せめて、本名くらい知っておこうよ、みたいな。ホントに何十年一緒に仕事してきた仲間でも、「あんた本名なんだっけ」って感じですから。

老後ってそれこそ、家族制度だったりとか、一般の社会生活の中にちゃんと身をおいている人たちが、心配していいことだと思うんです。うちらの老後って一体どこから? と、一般と照らし合わせる相場が自分たちのなかにないから、よくわかんないんですよね。

乙武 そうは言っても僕らにも心身の老いはやってくるわけで。

ミッツ 私、乙武さんって身体的な老いをどう感じるんだろうって気になります。だって「膝にくる」ということがないわけじゃない? 肩が上がる、上がらないもあんまり関係ないですよね。目は霞むか。腰痛とかあるんですか? 

乙武 あんまりないかな。僕の場合、意外にみなさんより健康寿命は長いのかなと思っていて。だいたい加齢とともに足腰をやられて、それによって行動範囲がぐっと狭まるわけでしょ。

僕は以前から電動車いすなんであまり関係ないんですよ。だから体力は多少落ちるかもしれないけど、そんなに変わらない生活を送れるのかな、なんて。気力次第ですけど。

Photo by Rana Shimada

ミッツ そうねー。概念があるかないかで健康って全然変わってきますよね。病は気からじゃないけど、捉え方だと思うんです。

神経をすり減らすって言うけど、神経って全身に通ってるから、私みたいに体がでかい人のほうが損な気がします。神経いっぱいあるから。

だけどマツコ(・デラックス)さんがすっげえ健康体なんですよね。なんでかっていうと、脂肪がありすぎて、神経まで刺激が届かないんだって。本人談だから、医学的なことかどうかは知らないけど、神経が体の奥にありすぎるみたいです。

だから無自覚なんですよね。一回新幹線にマツコさんと乗ってて、「ねぇ、むくみの対処法ってどうしてる?」って聞いたら「むくみってなに?」って。私もほんと馬鹿なことを聞いたもんだと。あの人にはむくみの概念がないんです(笑)。

あと、冨永愛に「どうやったら痩せられるんですか?」って聞いたら「痩せようと思ったことないからわかんない」って。概念があるかないかって本当に大事で、私もいろいろ麻痺させて生きていけたら、いいなぁって思います。

乙武 僕としては自分と同じような方の「老い」を知らないので、こういう体だから早死にするのか、こういう体だから長生きするのか、それとも変わらないのか、その答えがちょっと知りたいですね。

私もスクープされたい!

ミッツ 乙武さんは、今後はどんな活動したいんですか?

乙武 宣伝していいですか(笑)。年明けから、ネット上で会員制のオンラインサロンなるものを始めたんです。名付けて、「密室放談~エロから政治まで~」。タイトル通り、会員のみなさんと硬軟さまざまなテーマについて語っています。

今まではTwitterでやってたんですけど、やっぱり開かれた場だとアンチが「批判のための批判」をしてきたり、意図的に曲解してクレームを言ってきたりと不毛な展開になることが少なくないんですよね。その点、オンラインサロンでは非常に有意義な議論が可能になる。

あとね、私が主宰者だからか、会員のみなさん、けっこう変わり者が多かったり、そのせいで周囲から敬遠されてきたような境遇の方も多くて、すごく「共感力の高い」コミュニティになっているんですよね。それだけでも、始めてよかったな、と。

ミッツ なるほどね。 

乙武 あと、今回のことで、「ぶっちゃけキャラ」みたいになってますが、そういう吹っ切れた感を出せるのも短期間だと思うんです。僕は黒一色でもないし、やっぱり真面目なことも言いたい。依然として、社会に対して、「こうあるべきだ」という思いもある。

今はまったく求められてないのはわかってますけど、「そういうことも言いたいのに」というモヤモヤした思いはそのうち出てくるでしょうね。

まあ、今はこの18年間出せていなかった自分が出せて楽しいけど、このままゲスキャラだけを求められ続ければ、「これはこれで一面的なんだよなあ」とストレスを感じるのかもしれませんね。

Photo by Rana Shimada

ミッツ スキができて、世の中的にはより接しやすくなったと思いますよ。

乙武 実際、Twitterでも「騒動前より今の乙武さんのほうが好き」というお声もいただくんですよね(笑)。ミッツさんの今年の野望は?

ミッツ そうね、さっきは「別問題」って言ったけど、やっぱり週刊誌にスクープされてみたいかな。もっと話題になるようなことがしたい。英国王室に嫁げないかなとか思います(笑)。

乙武 年上に失礼ですけど、バカですねえ(笑)。

ミッツ 金正恩に求愛されるとか、プリンセス天功みたいな。

乙武 こうなったら、僕らが付き合って、雑誌にスクープされるとか?

ミッツ あ、それおもしろい! 表現とか見出しとか、すごい気を使われそう。これまでに例のないカップルだから、どういうふうに書けば良いのか戸惑うでしょうね。

乙武 それこそ、メディアごとの独自性が現れるかもしれない。

ミッツ 今年も何かと話題を振りまきそうだね(笑)。