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野球 週刊現代
勝てる組織は「掛け算」で生まれるが、巨人は「足し算」しかできない
いつも「穴埋め」の短絡的な補強

2年連続V逸の巨人に、また悪いクセが出てきた。今年こそ優勝をもぎとるためと、あたりかまわぬ乱獲ぶり。その陰でまたもや若い芽が摘み取られる状況に、ファンはため息をついている。

一貫性ゼロのチーム作り

本来、キャッチボールの相手となるはずの阿部慎之助(37歳)と村田修一(36歳)が、同じファーストミットを持って並んでノックを受ける。そのそばで通訳を介して何かを確認しているのが、2013年に楽天でプレーし、日本一に貢献したケーシー・マギー(34歳)だ。

その横を、将来の主軸候補と期待されていた3年目の岡本和真(20歳)が、重い足取りで外野に向かった。本職の三塁ではなく、外野手のグラブを持って……。

宮崎で行われている巨人のキャンプ開幕直後というのに、スタンドで見ていたファンは100人に遠く及ばない。球団が公式発表した3000人近い観客数がむなしかった。ベテランのプロ野球担当記者が明かす。

「阿部と村田の年齢から、1シーズン持たない可能性を考えて即戦力のバックアップ要員としてマギーをとった、というのが公式見解です。

昨年、3年ぶりに打率3割を超え、25本塁打と好成績を残した村田はもちろん、ファーストに専念すると再び宣言した阿部も面白いわけはないでしょう。しかも阿部はチームリーダーですよ。時折、笑顔を見せながらノックを受けていますが、球団の補強策に内心、穏やかではないはずです」

 

3年ぶりのリーグ制覇を目指して大型補強を断行した今オフ。マギーのほか、前DeNAのエース・山口俊や前ソフトバンクの左腕・森福允彦の加入が続々決まる。さらに、前日本ハムの陽岱鋼の獲得が決まりかけた時期、阿部はあるイベントに出席して、キツいジョークを飛ばした。

「読売ファイターズみたい」

近年、巨人が日本ハムとのトレードを頻繁に行い、陽を含めて日本ハムファイターズOBが6人に達したことを表現したものだ。放出される選手がベテラン選手にとどまらず、巨人の生え抜きの若手も含まれていることに、巨人一筋の阿部が我慢しきれず本音を漏らした、ともとれる。

かつて西武の黄金時代を知り、巨人でヘッドコーチとして優勝を経験した評論家の伊原春樹氏は首をかしげる。

「巨人というチームは毎年、優勝を義務付けられているので、フロント、現場を含めて優勝しかない、という緊張感を持つこと自体はいいことです。ただ、阿部、村田と競争させる意味でマギーを獲得したのでしょうが、村田が昨シーズン、巨人の水に慣れて実績を残したことを考えれば、マギーはいらなかったと思う。

マギーの加入によって岡本は外野もやるそうですが、三塁手で育てようとしていたのだから、計画を貫かないといけない。かつて大型内野手として入団し、いつの間にか外野に回り、放出された大田泰示にしてももう少し、うまく育てる方法はあった。

ドラフトでとった選手が毎年一人でも戦力になれば、総合的に強いチームになる。そういう意味で岡本は、村田の次の三塁手のレギュラーとしてある程度のリスクに目をつむって使われ続けないと、育ってこない。坂本(勇人)だって、使われ続けたことでチャンスをつかんだんです」

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「足し算」しかできない

どうしてこんな場当たり的な補強が巨人ではこうも繰り返されるのか。前出の記者が続ける。

「端を発したのは、やはりナベツネさんのひと言です。首位・広島に大きく離され、4位に後退した昨年7月ごろの、『由伸(高橋監督)の責任じゃないからな。フロントだよ。補強してないんだから。こんなに補強せずに、今の陣容で勝てったって無理だよ』という発言です。

この一件で読売新聞本社の幹部が敏感に反応した。以降、球団側に『選手をとれ、とれ』と圧力をかけていたんです。

球団側は昨年、育成を目的とした三軍を創設したばかりで、育てることと勝つことをバランスよく進めていきたかったのが本音。でも本社の『とにかく、すぐ優勝できる戦力を整えろ』という大号令に従わざるを得なかったんです」

生え抜きの阿部が本来の力を発揮した場合、36歳の村田と34歳のマギーが外様同士でサードのレギュラーを競う――。これほど、ファンが白けるポジション争いはない。そこには未来への展望がないからだ。

「どちらか調子の良い方を使う」という発想なのだろうが、巨人の補強はいつもそうだった。かつて落合博満、広澤克実、清原和博と各チームの4番を次々と連れてきたように、やることはいつも「穴埋め」の短絡的な補強。そこには「育てる」という観点がまるでない。スポーツ紙のデスクが言う。