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スポーツプレミア
周囲1000キロ、誰もいない…北極冒険家が明かす「孤独」の本質
極限だからこそ見える景色

「様々なケースを想定しておけば、どんなことも想定内。想定内であるなら怖いことなどないんですよ」

北極を1人でそりを引きながら横断してしまう男「荻田泰永」は優しい笑顔とは裏腹に、想定外なことを口にした。

TV番組の「クレイジージャーニー」で見ていたようなひげもないし、ぎらつきもない。外見は極めて普通の人。街中で会ったら冒険家とは思わないだろう。

国内外で注目されている北極冒険家の荻田

だが、話し出したら本領発揮。

半径1000kmにいる人間は自分だけというシチュエーションで、危険と隣り合わせの時間を数十日も過ごす。歩いていたら氷の割れ目で海に落ちるし、テントで寝ていたらシロクマが近寄ってくる。起きたら氷が流されて、進んできた距離以上に引き戻されていることもあるという。

「そんな毎日でどんな怖い体験をされましたか?」という質問に対しての彼の答えはあっけないものだった。それが冒頭で紹介した「想定内であるなら怖いことなどない」発言である。

「冒険中というのはリスクを冒せないので、すべてに関して想定しておくことが大切です」

 

どんな大変な経験談が聞けるかと思っていた僕は拍子抜けだ。

シロクマが来たら慌てず距離があるときにこちらに気がついてもらう。氷が薄い時はそりを引く紐を長くして、自分が海中に落ちてもそこにそりが来るのを防ぐ。聞けば聞くほどすごい話だが、そんなことの積み重ねこそが大事なのだという。

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「冒険」と聞くと、一か八かの賭けをしてチャレンジするイメージだが、実際は準備とシミュレーションを重ね、いかにリスクを減らしておけるかが勝負となる。

事前準備の大切さがよくわかる。これは僕の専門種目であるトライアスロンも全く同じ。レース前は様々な想定をし、道具や補給を準備し、トレーニングを重ねるのだが、実際走り出したらいろいろなことがあるので細かく考えすぎない方がいい。でもそれは丁寧な準備があってこそ。

準備8割とは上手く言ったものだ。