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企業・経営 週刊現代
みずほ銀行「若すぎる頭取誕生」の裏事情
ホントの狙いは、どこにあるのか

約3万人の行員を率いる組織のトップ。それがメガバンクの頭取だ。みずほ銀行では「ピカピカのエース」が、その座に上り詰めた。だが、頭取就任を喜ぶのも束の間。新たな戦いが幕を開ける――。

佐藤FG社長が語る

3メガバンクの中で最も若い頭取の誕生だ。みずほ銀行の次期頭取に藤原弘治常務取締役(55歳)が就任する。

持ち株会社であるみずほフィナンシャルグループ(FG)の佐藤康博社長(64歳)も、この人事に太鼓判を押す。同社長は自宅前で、本誌の取材にこう答えた。

「(藤原次期頭取を)見ていただければおわかりのように、『本格派』だと思います。彼の場合は海外も強いですし、すごい苦労人です。(海外駐在中に)自分で夜間大学に通った人間ですから。

その割には明るい性格で、人に好かれるタイプだし。企画部門をずっとやっていて、(監督官庁である)金融庁にも強い。エースですから、(次期頭取に)選ばれて当然だと思います」

佐藤社長がこう言うように、藤原氏は早くから「将来のトップ候補」の呼び声が高かった。

'85年に早稲田大学商学部を卒業し、旧第一勧業銀行に入行。2度の留学経験もあり、ニューヨーク支店勤務では国際業務も経験した。国内では企画部門を歩み、中期経営計画の策定や組織改革を現場で手掛けた。まさに「ピカピカのエース」なのである。

旧第一勧業銀行出身の作家・江上剛氏は、旧知の藤原氏が頭取に就任することを喜ぶ。

「彼のことは若い頃から知っていますが、実に素晴らしい男です。ニューヨーク支店勤務のときに、『自分には経理や財務の知識が足りない』と考えて、会社の経費ではなく、自費でニューヨーク大学の夜間で勉強し、MBAを取得しています。

また、('97年の)旧第一勧業銀行の総会屋利益供与事件では、企画部で一番の若手でしたが、海外の知識が豊富だったこともあり、当時の国際担当の副頭取がFRB(米連邦準備理事会)への説明に赴いた際に、彼が同行してくれました。

彼は仕事に対して情熱を持っているし、根性もある。土壇場の場面でも逃げずに対処する胆力を備えていると言えるでしょう」

ただ、藤原氏本人が会見で「昨年からたくさん驚きがあるが、(自らの頭取就任が)最大のサプライズ」と述べたように、時期尚早との見方が大半を占める。藤原氏の早すぎるトップ就任の裏側で何が起こっていたのか。

3年前に時間を遡る。この頃、みずほ銀行は暴力団への融資事件で揺れていた。みずほFG社長兼頭取だった佐藤氏は、反社会的勢力への融資を把握しながらも放置していた問題で、金融庁から2度の行政処分を受け、頭取職を辞任した。

「もともと、佐藤氏は腹心の岡部俊胤副頭取(当時、現みずほFGリテール・事業法人カンパニー長)を自らの後継として考えていました。ところが、岡部氏は長く総会屋担当をしてきたため、ヤクザローン事件で処分を受けてしまい、頭取レースから脱落した。

その結果、海外畑が長く、ヤクザローン事件で傷がつかなかった林信秀氏が、『棚ぼた』で頭取の座を手に入れたんです」(全国紙経済部デスク)

 

その林氏は頭取に就任後、存在感が薄かった。みずほ銀行幹部からはこんな言葉が漏れる。

「林さんは海外での営業が長かったため、国内営業の分野で知恵が出ないのは仕方がないですが、やってきたはずの海外戦略さえ描けない。グローバル展開を推進する三菱東京UFJ銀行や、手堅い国内営業を重視する三井住友銀行と比べて、みずほ銀行は何もしてこなかったに等しい。

林さんが頭取として何をやったのかと考えても、何も思いつきませんし、新しい戦略も出ませんでした。

行内には、このままではメガバンクから脱落するという危機感までありました。そういった声が社外取締役に届き、今回の5年若返り人事に結びついたのだと思います」

みずほ銀行頭取 林信秀氏 Photo by GettyImages

「出身行なんて関係ない」

みずほFGの「トップ人事」は、4名の社外取締役で構成される「指名委員会」によって決定されるという。

元昭和電工会長の大橋光夫氏が委員長を務め、元日立製作所会長の川村隆氏、元最高裁判事の甲斐中辰夫氏、元経済財政政策担当大臣の大田弘子氏が委員を務める。
佐藤社長がみずほFGにおけるトップ人事決定のプロセスを説明する。

「トップ人事においては、候補者の情報を指名委員会が全部共有し、第三者の人事コンサルタントが作った何十ページにも及ぶレポートに目を通しています。本人の意向や意見も聞いてはもらえますが、最終的に決めるのはすべて社外取締役の指名委員会です。

おそらく、日本企業で指名委員会制度を導入している中では、最も公平なシステムだと思います。

出身行なんて、まったく関係ないですね。人事コンサルタントが、生まれから育ちまで全部調べた上での実力主義ですから。出身行なんて、たまたまそうなっているだけで。もう、みずほの中で出身行なんて言う人は誰もいませんよ」

こうして次期頭取に推挙されたのが、藤原氏だったわけだ。