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企業・経営
"老舗ベンチャー"中川政七商店の強さの秘密は「工芸と経営の融合」
13代目社長に聞く「ピンチ挽回」のコツ
中川政七商店の中川政七社長

自社採用サイトに「300歳、育ち盛り」と大書する企業を取材した。創業・享保元年(1716年)、奈良県を本拠に手績み手織りの麻織物を製造・販売する中川政七商店だ。伝統的な製法に現代的デザインを融合した商品は世代を問わず大人気。また、全国の工芸品のなかでもイノベーティブな商品を選んで自社店舗に置き、ショップはメーカーの発信基地にもなっている。現在の社業を築き上げた13代目・中川政七社長(42歳)に聞いた。

工芸の世界に持ち込んだ経営戦略

【気がある】

当店は茶道具も扱うため、最近私も、趣味でお茶を始めました。茶道というと「作法やお手前を教わる」という印象があるかもしれません。しかしそれらは「もてなすとは何か」という本質が形になったもの。この奥行きを含め、学ぶことは、大変に興味深い体験でした。

また、師匠の言葉も勉強になります。最近「気があると伝わる」と聞きました。お辞儀ひとつでも、ただ頭を下げる動作と、心からの敬意と感謝を持って頭を下げる動作は同じように見えて異なる、という意味です。ビジネスでも言えることかもしれません。

【経営がない】

私は工芸品の業界に、普通の「経営」を持ち込みました。

'02年に大手メーカーを退職して当社へ来ると、まず「生産管理」という概念が存在しないことに驚きました。売れ筋の商品は品切れで、ほかの商品は次々できてくる。社員に理由を聞くと、売れ筋は「つくるのに手間がかかる」という。

人事も同じで「企業ビジョン」がない。社員は自分の生き方、あり方と仕事が関連づけられておらず、定時になればやるべきことを放り出してでも帰って行きました。

「経営」が存在しなかった理由は明快。工芸品の企業の多くは、問屋さんに「これつくって」と頼まれ、生産するだけだったからです。

【ブランド】

入社後すぐ、ブランディングを行いました。志を持ち、広く知ってもらうのです。'03年にはじめて立ち上げたブランド「粋更kisara」ではお客様に「美しい暮らし」を届けようと考え、その思いをデザインやコピーに反映させました。同時に全国の有名商業施設に自社店舗を出店し、ブランドのアイデンティティや製造背景や製品のこだわりなどを紹介し、日本が誇るものづくりの良さをお客さまに直接伝えたのです。

もちろん苦しい時期はありました。この過程で元の従業員のほとんどが辞め、人手不足で大変な仕事量を抱えこむこともありました。しかし何事も実際にやってみせるしかありません。長く続けるうち、次第に我々の理念に共感してくれる優秀な人材や、お客様が集まり始めました。

【花ふきん】

当社の人気商品は、奈良の特産・蚊帳生地を使った「花ふきん」です。二枚重ねの大判なので、畳めば厚みが出て吸収力抜群、広げれば乾きやすく、出汁を濾す、ものを包むなど幅広い用途に使えます。

よく「なぜ売れたのか」と他の商品と比較されますが、これは我々の考え方や在り方といった本質が形になったものだと思います。デザインとか表面的なものだけが評価されたのではありません。

 
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