Photo by iStock
企業・経営
社長が自ら率先して「失敗」してみせれば、社員も変わる!
「富士そば」2代目社長の哲学
ダイタンホールディングスの丹有樹社長

東京近郊に約120店舗を構える「名代富士そば」の運営会社・ダイタンホールディングスを取材した。個性的な組織作りで知られ、たとえば各店長が独自のメニューを考案できるため、店ごとにお品書きが異なる。

また「働く人が入れ替わらないほうが効率的」と考え、アルバイトにも賞与を支給しているという。創業者・丹道夫氏のあとを継ぎ、'15年に社長就任を果たした丹有樹氏(42歳)に聞いた。

やってみなきゃ、わからない

【パン屋?】

父は子どもの頃から私を信頼し、のびのび育ててくれました。「あとを継ぐならいったん銀行に就職して……」といったことは一切言わず、私は大学卒業後しばらく、社業とはまったく関係ないテニスのコーチをしていたほどです。同様に、昔も今も現場で働く方のことを徹底的に信頼しています。

まず、店長がやりたいと言ったことはほぼ否定しません。だから店によっては「丸ごとトマトそば」のような思い切った品を考案したり、中にはパンとコーヒーを出した店まである(笑)。

でも父は「結果はお客様が決めるもの」と達観していました。

現代の言葉で言えば、昭和の時代からボトムアップ経営を実践してきたということでしょう。実はこれには理由があり、父は体が弱く、できるだけ人に任せたかったらしいのです。

【300円】

富士そばは安い店、と思われがちですが、我々はそうは思っていません。

牛丼やハンバーガーが値下げをしたときも追随せず「味を追求しよう」と考えました。たとえば出汁の香りを強くするため鰹節を1・5倍にし、そのコストを吸収するため、割り箸が安い業者さんを全国から探しました。また天ぷらを自社製造に切り替え、コストが下がった分だけ具材を増やしました。今は各店舗で揚げているから、さらにおいしいと思います。

価格を下げれば、味は落ちてしまうもの。するとお客様は「おいしいから」食べるのでなく「安いから」食べるようになってしまいます。そんな残念な思いをさせてはいけないと思い、当社は300円という値段のなかで最高の品を出そうと考えたのです。

【進化論】

店をよくしていくコツは、絶えず失敗を繰り返すことでしょう。

たとえば一部店舗で試験的にそば粉を国産に変えたことがあります。原価が高くなる割に味は変わらず、中止しました(苦笑)。

そば粉の比率を4割から5割に高めたこともあります。おいしかったのですが麺が伸びやすく、試験導入した八王子の店舗にはお客様からクレームまできたので、これもやめました。

一方、一部店舗で1000円近くする上カツ丼をメニュー化したら、こちらは大人気。高価格帯の商品も求められているのか、と再度問い直すきっかけになっています。何が「あたり」かは、やるまでわかりません。

 

「炎上」を怖れるな!

【社員教育】

最近、社員たちが余計なことをしなくなった気がしたのです。そこで、私自らが動こうと、韃靼そばを使った高級業態を開発しました。3年で閉店してしまったので、これは失敗と言っていい(苦笑)。でも、出店した意味はあるのです。

もちろん成功を前提に、必死で考えて実行するのですが、それでも失敗するのがビジネス。失敗の経緯を見た社員が「社長だって失敗しているんだ」「じゃあ思い切ったこともやってみよう」と思ってくれれば充分、一歩前進。

じつはSNSも、最初は私が始めました。社員はみんな「炎上」が怖い。だから「僕が責任をとるよ」と私が始めたのです。