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野球

プロ野球を盛り上げてくれた「メーク・ドラマ」な名(迷)監督たち

ファンに愛されても、愛されなくても
黒鉄ヒロシ(くろがね・ひろし) '45年生まれ。漫画家、コメンテータとして活躍中。代表作は『ひみこーッ』、『赤兵衛』など。読売ジャイアンツの熱狂的なファンとしても有名で、「ON」との親交も深い

森高夕次(もりたか・ゆうじ) '63年生まれ。漫画家、漫画原作者。代表作に『砂漠の野球部』『おれはキャプテン』などがある。現在「モーニング」で野球漫画『グラゼニ』を連載中。自身はヤクルトファン

川上哲治の知られざる一面

黒鉄 監督という職業がファンレベルでも注目されるようになったのは、やっぱり三原脩(西鉄、大洋など)さんのすごさを感じるようになってからでしょうね。

森高 その慧眼から「魔術師」とも呼ばれました。

黒鉄 それを端的に表すエピソードがあるんです。

1976年の巨人と阪急の日本シリーズ第6戦。僕も後楽園球場に行っていたんだけど、試合は5回表を終わって阪急が7対0。これは巨人はダメだと思って食堂に行って「ああ、今日はもう負けだ」と、ついボヤいたの。そうしたらテレビの真下にいた黒いコートのおじさんが「いや、この試合はひっくり返す。阪急の選手は勝ちを確信して腰高になっている」と言って立ち上がって、こちらを見たら三原さんだった。

森高 もうすでに監督業から身を引いていた頃ですよね。結局、三原さんの言った通り巨人が8対7で大逆転勝ちを収める。

黒鉄 でも、一人でテレビの下でコーヒーを飲んでいるというね。自己演出力なのかわからんけど劇画みたいでしょ。

森高 監督は「絶対的な権限を持っている」ことを世に示したのは、川上哲治(巨人)さんが元祖じゃないですか。

黒鉄 三原さんも川上さんも存在自体が突出していましたからね。

 

森高 ただ、あれだけ監督としても勝ったのに、最後はファンから嫌われて辞めた感じですよね。

黒鉄 うん。9連覇してなんで嫌われなきゃいかんのかという話ですよ。夏場、試合中に蚊が飛んできて、川上さんが両手で叩いた。そうしたらランナーが盗塁のサインと勘違いして走っちゃった。「蚊だ、ばかやろう」って。そういう一面も表に出せば人気も出たんだろうけどね。

監督はチームの広告塔たるべし

森高 厳しい取材規制をして「哲(鉄)のカーテン」と揶揄されましたが、鬼気迫るものがあった感じがします。

黒鉄 その点「ミスター」(長嶋茂雄)は面白かった。バントのジェスチャーをしながら「代打、川相」。そうやってときどき間抜けをやると、ファンも身内のように感じてくる。森祇晶(西武)さんにしても、落合博満(中日)さんにしても、記録だけ見れば見事だけど、如何せんファンを引き込む面白味がなかった。

森高 落合さんは勝利至上主義に行きついた人。だからショーマンシップとか、ファンサービスは極力しない。実際、名古屋でも人気は低かった。

黒鉄 拍手しようと思ったら背中を向けている。そんな感じ。野村克也(ヤクルト、阪神など)さんは天下の「すね者」だね。すねて、ボヤいて。でもそれが芸になっていた。

森高 確かに野村さんは発信力がありましたよね。僕は監督という存在は「広告塔」の役割を担っていると思うんです。パフォーマンスをする監督は嫌いじゃなくて、原体験で言うと金田正一(ロッテ)さん。コーチャーズボックスに立って足を上げたり、ストレッチ体操みたいな動きをしてみたり。すごく印象に残っています。

黒鉄 広島を初優勝させた古葉竹識さんはベンチから顔を半分だけのぞかせていたけど、あれはなんなのかね。恥ずかしがり屋なのか、面白半分でやっていたのか。