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国際・外交 アメリカ
安倍首相をポケットマネー2000万円超で歓待したトランプの皮算用
タダより高いものはない!

あまりに贅沢な週末

タダより高いものはないーー。よく言われる言葉だが、国家間の外交ほど、この言葉がぴったり当てはまる事象はないかもしれない。

安倍首相は先週末(2月10日)の訪米で、トランプ米大統領から破格の歓迎を受けた。ホワイトハウスで出迎えた大統領がいきなり首相をハグしたのに始まり、冒頭の写真セッションでは「(安倍首相とは)ケミストリー(相性)が良い」と発言。

週末を過ごすため、大統領専用機「エアフォースワン」で常夏の南部フロリダに移動、トランプ家所有の豪華リゾート施設「マール・ア・ラーゴ」に首相夫妻を招き、首相とゴルフ場を梯子してプレーした。夫人同伴のディナーを連夜にわたって楽しむというおまけもついた。

はっきり言って、米大統領がエアフォースワンに外国首脳を同乗させることも、初の公式会談直後に一緒にラウンドすることも非常に稀な話である。首相は歓待を受けたのだ。しかも、費用は億万長者のトランプ大統領持ちだった。

肝心の共同声明でも、大統領は「揺らぐことのない日米同盟」を「アジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎(=いしずえ)」と位置づけて、「(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用される」ことを確認、「同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と暗に中国を牽制した。

北朝鮮に対しても、「核及び弾道ミサイル計画を放棄し、更なる挑発行動を行わないよう強く求める」と明記した。

翌日、北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を行ったとのニュースが滞在先のフロリダに入ると、両首脳はそろって記者会見した。首相が「断じて容認できない」と口火を切ると、大統領は「私がみんなにわかってほしいのは、米国は偉大な同盟国・日本と100%共にあるということだ」と足並みを揃えた。

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いったい何故、トランプ大統領は日本の首相をこれほど歓待したのだろうか。

背景に、同大統領が国際的な孤立に直面している事実はあるだろう。同大統領は、隣国メキシコとの国境に壁を建設することの是非やその建設費用の負担を巡って、同国のニエト大統領と対立、米墨首脳会談をキャンセルされた。

次いで、豪州のターンブル首相とは、移民移送問題で激論になり、協議の途中で電話を切るというハプニングに自らを追い込んだ。

また、大統領就任後最初に首脳会談をしたメイ英首相は帰国後、英国内で集中砲火を浴びて、イスラム圏7カ国出身者の入国を禁じたトランプ氏の大統領令は、「対立を生み、間違っている」と批判するに至った。

しかも、その大統領令は司法府・裁判所に不当と見なされ、効力を停止されている。

しかし、それだけで、安倍首相がこれほどの厚遇を受けたと考えるのは短絡的だろう。そこで、トランプ大統領の心中を探る手掛かりとなるのが、今回、両首脳が合意した共同声明と共同記者会見の内容だ。

これらを丹念に読むと、日本の政府とマスメディアが「ほぼ満額回答を得た」とする安全保障面でさえ、同大統領がちゃっかり厳しい注文を付けていた事実が、さらには「課題を先送りした」とされる経済面でも、実際には日本が大幅な譲歩の構えを見せていた実態が浮かび上がってくる。

 

厚遇のツケを払う日が来る?

今回の安倍首相の訪米では、トランプ大統領のちょっとした動作にも、首相を歓迎する姿勢がはっきりと伺えた。

例えば、首相のホワイトハウス到着時。新聞によると、あらかじめ両政府の事務方が決めていたのは、大統領が車寄せまで出迎えて、その場で両首脳が力強く握手するという演出だった。その後、すかさず建物内に首相を招き入れる手はずだったという。

ところが、トランプ大統領は一瞬戸惑った後、いきなり首相を引き寄せてハグをした。握手はハグの後になった。

この動作について、外国メディアは「1度しかあったことのない相手を抱きしめた」と皮肉ったという。

が、大統領自身は共同記者会見で「今日(最初に)、お会いしたときに握手して、それだけではなくハグをした。そういう気持ちになったからだ。

(安倍首相とは)とても良いつながりを持っている。ケミストリー(相性)が良い。もし変わったら、そう言うが、そういうことは起きないだろう」とにこやかに語っている。