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防衛・安全保障 外交
トランプ外交が隠しきれないアメリカの「弱さ」
自由世界の秩序はどうなるのか

トランプ米大領が誕生して3週間が過ぎた。

就任早々、矢継ぎ早に大統領令を連発しリーダーシップを印象づけようとする姿は、アメリカという超大国をまるでおもちゃにしているかのようだ。

しかし、「アメリカの理念」を無視した政策は早くも壁にぶつかっている。中東・アフリカのイスラム圏7ヵ国からの入国を一時禁止した大統領令が、司法判断により発令からわずか1週間余りで効力停止に追い込まれたことだ。

アメリカ政治の「チェック・アンド・バランス」については、昨年11月の本コラムの記事<アメリカ大統領に「できること」は、実は意外に限られている!?>(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50201)で書いたので、関心のある方は読んでいただきたい。

ともあれ、世界は「ドナルド・トランプ大統領」に向き合わねばならない。本稿ではぼんやりと輪郭が見えてきたトランプ外交と世界について考察してみたい。

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隠しきれなくなったアメリカの「弱さ」

トランプ大統領の独断専横ぶりにアメリカン・パワーの「強大さ」を再認識している人も多いことだろう。そのことは否定しようのない事実だ。

しかし、トランプ外交は決して「強さ」に基づく外交ではない。逆に、相対的に国力を低下させるアメリカがその「弱さ」を隠しきれなくなっていると見るべきである。

なぜ、そう思うのか? それは覇権国家とは何か、ということに関わる問題である。

 

19世紀のイギリスや20世紀のアメリカが覇権国家として自由貿易体制を推進したのは、それが国益だったからである。

産業革命を成し遂げたイギリス、大量生産と技術革新により経済大国となったアメリカ。圧倒的な経済的優位性を持った覇権国家にとっては、開かれた経済こそが、国益を最大化するシステムなのである。

パックス・ブリタニカ(イギリスによる平和)、パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)の世界では、それぞれの覇権国家が海洋の自由、国際秩序を守るために多大な軍事的コストを支払っても、余りある「見返り」が期待できたのである。

その中で、トランプ大統領は「アメリカは世界の警察官」ではないという姿勢を一層鮮明にし、「アメリカ第一主義」を掲げて保護主義的政策を打ち出した。

自由貿易体制の擁護者から保護主義に変わり身したアメリカ。その姿は、覇権国家としてのアメリカが歴史の舞台から退いていく後ろ姿のように見える。

トランプ大統領は歴史の必然!?

少々話は逸脱するが、怒れる白人労働者層が生んだトランプ大統領とは歴史の必然ではないかとも思える。

アメリカ社会には1990年代ごろから、IT産業や金融業の隆盛、グローバル化が進行する中、製造業などの単純労働は途上国などに移し、大多数のアメリカ人は知識集約型で高賃金の仕事に就くのだという幻想が振りまかれた。

しかし、そんなことは現実となり得なかった。幻想から覚めたアメリカには、斜陽産業が集中するラスト・ベルト(さびついた工業地帯)のような地方が残され、政治的な安定を担保してきた中間層は大幅に縮小していた。