企業・経営 アメリカ

首脳会談を契機に、トランプが日本の自動車産業に打つ危険な一手

「口撃」の次は、反トラスト法強化か

日米経済、このまま無事に進むとは思えない

2月10日未明に開かれた日米首脳会談。その共同声明では、日米間の貿易・投資関係の強化が打ち出された。自由で公正な貿易ルールに基づく日米経済関係の強化も確認された。

日本に対して強硬姿勢を示すのではないかと見られていたトランプ大統領は、安倍晋三首相をハグして迎えたとも報じられ、一見、両国首脳の友好関係は深まっていたように見える。

貿易赤字の大きな要因だとして、トランプ氏の「口撃」対象になっていた日本の自動車産業の代表でもあるトヨタ自動車の豊田章男社長は11日、静岡県湖西市で記者団に対して、

「日米の経済関係は自由で公正な取引をベースにすると大統領も言っており、産業界としても心強い発言だと感じた。米国でも良き企業市民であるように努力を続けていく」

などと述べ、日米首脳会談が友好的に進んだことを評価した。日本の自動車メーカーに対して何らかの強い要求が打ち出されたわけではないので、きっと内心安堵したことであろう。この日は、豊田章男氏の曾祖父に当たる豊田佐吉翁生誕150年記念式典が行われた日でもあった。

(筆者撮影)

友好的に進んだ日米首脳会談を受けて、日米の経済交渉が今後も摩擦なく進展していく、ととらえてよいのだろうか。筆者はこのまま無難に進むとは到底思えない。ビジネスマンのトランプ氏は交渉相手に対して、ふっかけて様子を見ながら落としどころを探るのがうまい、と言われる。手を変え、品を変え攻めてくるだろう。

そして、無知を装いながら無理難題を押し付けて、相手がどう出てくるのかを窺ってくる。今回、日本側がかなり下手に出たことで、トランプ氏は「口撃」は有効だったと判断、さらに日本側の譲歩が引き出せると踏んでいることであろう。

 

筆者は、今後もトランプ氏は日本の自動車産業をターゲットにしてくると見ている。多くのメディアが報じているように、すでに日本の自動車メーカーは米国内で多額の投資を行い、雇用創出に貢献している。

1980年代に日本からの輸出が問題になっていた時期とは産業構造が変わっている。大手3社の米国生産の加速ぶりはもの凄い。トヨタの1995年の米国生産は64万台だったのが、2016年は138万台にまで増えた。ホンダは55万台から129万台、日産は46万台から100万台にそれぞれ増えた。

こうした現状から考え、さすがに完成車の現地生産を増やすことは簡単ではない。これ以上、米国での完成車生産を増やしたら、日本からの輸出が減少して雇用問題になりかねないからである。さらに、完成車工場の建設には最低でも500億円近い投資が必要なうえ、用地選定などに時間もかかるので、簡単にはいかない。

この点については米国側も理解しているはずだ。だからトランプ氏がまず求めてくるのは、部品の「現地調達比率」の拡大であろう。

たとえば、トヨタの米国生産車の現地調達比率は70%程度で、残り30%は日本などから輸出している。この比率を引き上げさせるために、日本の部品メーカーに対して米国内での生産増強を求めるか、米国企業からの調達増大を求めてくる可能性が高い。特に後者を強く求めてくるのではないか。

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