お金がたくさんあっても、それだけでは社会は良くならない。金融システムの欠陥

HARUKA MERA

米良 はるか

2017.03.01 Wed

日本初のクラウドファンディングサービス「Readyfor」を立ち上げた米良はるか氏。その経歴からはチャレンジ精神の豊富な人物像を想像するが、もともとは「自分が何をしたいのかわからない」と悩む、ごく普通の学生だった。

そんな米良氏がReadyforを日本最大の規模まで成長させたPDCAサイクルは、彼女のキャラクターを反映したもの。そしてその背景には、ユニークな「挑戦」と「失敗」への認識があった。

インタビュー後編では、米良氏の視点から、日本の金融システムと、そもそも「お金」とは何なのかという根源的な問題に切り込む。

(前編「『挑戦』をやさしく包む社会へ〜何者でもなかった私が始めたこと」はこちら)

(取材&構成・朽木誠一郎/ノオト、写真・林直幸)

既存の金融システムと共存できるのか

――日本にクラウドファンディングという新しい資金調達の仕組みを持ち込むにあたり、困難はありましたか?

特に困難に感じることはありませんでした。というのも、私たちがやっていることは、生き方や働き方が変わっていく中で求められていたと思っていて。インターネットでこれだけ個人の活躍の場が広がったのに、お金の面では法人格がないことで不利になる場面が未だにたくさんありますよね。

今の金融機関の融資というのは、基本はお金を貸して返してもらわなきゃいけないシステム。だから、金融機関というのは、例えば飲食業界に融資しやすいんです。ビジネスモデルがはっきりしていて、回収のメドがつきやすいから。一方、今は、既存のマーケットがない、どんな広がりを見せるかも読めない、ということがよくあります。

貸したら返してもらわなきゃいけないとすれば、よくわからないものにはお金を貸せない。でも、人と人がつながるエネルギーによって新しいことが起きる時代には、同時多発的にさまざまなコミュニティの中でプロジェクト的なものが生まれる。これを支援するには、クラウドファンディングのような新しい金融システムが必要だったんです。

――クラウドファンディングと既存の金融システムは共存できますか?

私はできると思っています。支援を集めたプロジェクトが事業性を帯びてくれば、より大きな資金が必要になりますよね。ある程度、事業として展望が開けた段階で、金融機関が融資をする。私たちとしては、プロジェクトがそこまで成長するサポートができればいいな、と。

ただし、今、必要な人の元にお金が行き渡っていないのは、システムとして変だと思うんです。金融業界ではずっと資金について「貸し手がいない」「滞留している」と言われていますよね。ミスマッチが起きてしまっている現状は、変えていかなければいけないのではないでしょうか。

これは私が個人的に不思議だと思っていることで、企業なのでもちろんお金は増やさなきゃいけないと思いつつ、なぜ増やさなきゃいけないのかがわからなくて。それよりも考えるべきは、必要な人に届いているかどうかなのでは、と。当然、お金が増えれば確率的に行き渡るのだと思いますが、そのお金で何が生まれるかが大事ですよね。

――「お金」というものへの根源的な疑問があるのですね。

何かやるためにお金が必要だというのは、その通りです。でも、資産的な意味でみんなにとってお金が必要とはあまり思っていなくて。重要なのはやはり、使い方。それがわからないと、お金を増やして、貯める方向に進んでしまう。それが現在の金融システムの問題にもつながっているのかもしれません。

そもそも、お金がたくさんあることで、社会が良くなることはないと、私は思います。お金を持つことには責任が伴う。それは「お金をよりよい形で使う」という責任です。Readyforに集まるお金は、たくさんの人の想いを象徴するもの。それを使ってチャレンジするというのは、お金の使い方として本来的なのではないかと思います。

「ふるさと納税」と「緊急災害支援」に乗り出した意図

――2016年末に「ふるさと納税」と「緊急災害支援」に関する仕組みがスタートし、お金の「使い方」としてはより社会性の高い方向に舵を切った印象です。

ガバメントクラウドファンディング(GCF)では、財源不足に悩む地方自治体がプロジェクト実行者になり、インターネット上で不特定多数の人から資金を募る。
GCFを通して選んだ自治体を支援すると、支援者の所得税と住民税から支援金額に応じて一部が控除される。返礼品(ギフト)として特産物などが手元に届くが、従来のふるさと納税よりも社会性が高いことが特徴。
例として、『地域医療を守るため原発事故後唯一留まった高野病院を支援します』では、病院への寄付という意味合いが強く、ギフトは礼状と領収書。このように、GCFでは集まった支援金の使途が明確に示されているため、応援したい取り組みに直接寄付ができる。
前触れ無く人々の生活を脅かす自然災害。それが発生してしまったときに行われる寄付は、誰でもできる効果的な支援の一つ。しかし、「寄付したお金がどこでどう使われるのか」がはっきりしている場合は多くない。
そこで、Readyforでは、緊急時も透明性のある支援をするために、緊急支援活動の実績のある団体を事前に登録、迅速に送金し、その後も継続的に活動報告をしていく、というプログラムをスタートした。

クラウドファンディングのマーケット自体が、おかげさまで少しずつ広がっていて、各社が多様な取り組みをしています。その中で、私たちがやりたいことは、一貫して「挑戦」したい人にそれができる環境を整備すること、チャレンジを阻むものをできるだけ少なくすること。それをどんどん実現できるように、会社を進化させたいと思っています。

ふるさと納税のプロジェクトについては、もともと自治体は自治体のルールにより、一般的なクラウドファンディングができないという事情があったんです。だから、そのルールに合わせて、Readyfor上でも実現できるプロジェクトを、自治体の方々と一緒に考えて作りました。

災害支援プログラムも、私たちは2011年3月にサービスをリリースしているので、東日本大震災に関連した約700件のプロジェクトの経験がありました。その経験を活かして、緊急時にもっと直接的にお金が届いて、現場の人たちが活動資金の不安なく、どんどん意義のあることを実現できるようなサポートをしたい、と。

このように、Readyforの思想に則って、これまでのノウハウやリソースを転用しながら、もっとクラウドファンディングを拡張してできることがある。そうすれば、今までさまざまな理由でクラウドファンディングという選択肢を使えなかった人にも、使いやすくなる。そのためにも、今年は頑張りますよ(笑)。

「挑戦しやすい世の中」を作るという「挑戦」

――この先、Readyforとしての具体的な展開はありますか?

ノーベル医学生理学賞を受賞された大隅良典・東京工業大栄誉教授の訴えをきっかけに、大学の基礎研究の資金不足というのが話題になりました。私はこの問題も、つまりは必要な人にお金が届いていないということだと思うので、それを援助できるような仕組みを作っていきます。

今年1月に筑波大学との提携がはじまり、寄付金の獲得に向けたプロジェクトもいくつか公開されました。今後、特に研究費が不足している基礎研究や、学生が使用可能な自由度の高い研究費、大学の強みを生かした学際的研究でクラウドファンディングを活用するケースが増えていくと思っています。

筑波大学のほかにもいくつかの大学との話が進んでおり、今後も日本の研究や大学を支える仕組みを作っていきたいと考えています。

――期待しています。米良さんご自身としてはどのような挑戦をしていきますか?

事業が成長するにつれ、会社の中でも個人が挑戦をし続けられるような環境を、しっかり作らないといけないと感じています。ベンチャーでは「誰かがいなくなったら終わり」ということがあり得ますが、会社が大きくなると、基本的には個人の力に頼らなくなりますよね。でも、今はやっぱり個人の時代なので、個人としても活躍してほしい。

メンバーには「サポートしたい」というタイプの人が多いのですが、最近ではそれぞれのメンバーの中に「どういう人をサポートしたいか」という軸が生まれてきています。メンバー一人ひとりがやりたいことと会社の中でのミッションを一致させて、それが実現できるような組織を設計すること、それが私の当面の挑戦です。

組織を運営していて、あらためて、自由と規律のバランスが難しいと思うことが増えました。これはきっと、私たちがより良くしたいと考えている、「社会」という遠くて大きなものでも同じなのでしょう。自分の会社という近くてまだ小さいもので二の足を踏むわけにはいきません。これを乗り越えて、私自身ももう一段上がりたいです。

<了>
  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク

米良 はるか(めら はるか)

READYFOR 代表取締役。2010年慶応大学経済学部卒業。12年同大学院メディアデザイン研究科修了。大学院時代にスタンフォード大学に短期留学し、帰国後に「READYFOR(レディーフォー)」を立ち上げた。2014年7月に株式会社化し、NPOやクリエイターに対してネット上での資金調達を可能にする仕組みを提供している。2012年には世界経済フォーラムグローバルシェイパーズ2011に選出され、日本人として最年少でダボス会議に出席。St.Gallen Symposium Leaders of Tomorrow、内閣府国・行政のあり方懇談会委員など国内外の数多くの会議に参加。