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天下り斡旋で辞任、文科省前事務次官の「華麗すぎる人脈」

型破りな性格、ブログで政権批判も…

「退職金なんか出なくとも」

文部科学省が、リクルート事件以来の激震に見舞われている。

リクルート事件当時は事務次官が収賄容疑で逮捕され、今回は前川喜平事務次官(依願退職)が、審議官時代に自ら天下りの斡旋に口利きをしていたことが発覚した。

内閣府の再就職等監視委員会による調査を欺くため、人事課を中心に口裏合わせや想定問答まで作成していたことなどは、事務次官の単独犯罪だったリクルート事件に比べ、むしろ悪質といえる。

映像は残酷だ。7日に行なわれた衆院予算員会の集中審議で、前川氏は「万死に値する」と頭を下げたが、違法性の認識については否定、死を持って償うほどの反省をしている様子はなかった。

文科省の天下り斡旋問題には二つのルートがある。

ひとつは、人事課OBの嶋貫和男氏が、受入先の学校法人などと文科省を仲介し、人材をマッチングしていたルート。

もうひとつは、前川氏が審議官時代に自ら斡旋の口利きをしたルート。

前者は国会審議のなかで、システムとしての組織的斡旋の構図が浮かび上がっているが、前川ルートはその陰に隠れて、それほど注目を集めてはいない。

 

1月20日に公表された監視委の報告書によると、当時文科審議官だった前川氏は、ある法人に再就職していたOBに対し、後任に他のOBを再就職させることを目的に退任の意向の有無を確認し、再就職先の情報提供を依頼するなどして法に違反した、としている。

ある法人とは、文科省の歴代幹部が長年にわたり天下りを続けている「文教協会」という団体を指す。今回の問題を受けて松野文科相が、補助金の支出や取引の停止を表明すると、突如解散を宣言したあの団体である。文科省がOBを食わせていくための丸抱え組織であり、天下り利権のひとつといわれるゆえんだ。

依願退職した前川氏は、推定5600万円の退職金を手に次官を追われたが、文科省幹部たちは「前川さんは退職金なんてなくても遊んで暮らせるはず」と異口同音に話す。その根拠となるのが、前川氏の華麗な人脈だ。

麻布高校、東大法学部を卒業した前川氏は1979年4月に旧文部省に入省。初等中等教育局担当の審議官、官房長、文部科学審議官などの要職を歴任したあと、2016年6月に事務次官に就任した。入省時から「将来の事務次官」と期待されていた前川氏の出世とともに一族の威光にも注目が集まった。

祖父は、高度成長の波をとらえて産業用冷凍機製造で財をなした「前川製作所」創業者。喜平氏の妹は参院議員の中曽根弘文氏に嫁いでいる。自らも与謝野馨文相(当時)の秘書官を務めたことで国会議員との幅広いパイプを築いていった。

政官財以外に見逃せないのが、文芸界との〝縁〟である。

「恵まれない学生の勉学を後押ししたい」と祖父が作った男子学生寮が、文京区目白台にある「和敬塾」。1955年に設立され、約7000坪という広大な敷地に6棟の寮がそびえ、星雲の志を抱いて上京した男子学生が500人ほど共同生活を営んでいる。

<その寮は都内の見晴らしの良い高台にあった。敷地は広く、まわりを高いコンクリートの塀に囲まれていた。門をくぐると正面には巨大なけやきの木がそびえ立っている。樹齢は少なくとも百五十年ということだった…>
 
作家・村上春樹氏の代表作『ノルウェイの森』に登場する寮のモデルは、この和敬塾だ。

村上氏は早稲田大学に入学した1968年4月から半年ほどここで生活し、自らのエッセイでも、初めての一人暮しの時間を過ごした寮での日々を懐かしんでいる。

そして、前川氏もこの寮を巣立った学生たちとのOB会を楽しんでいたという。

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