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不正・事件・犯罪 週刊現代

二重のなりすまし詐欺!一見善良そうな老人が「地面師」一味だった

こうしてあなたも土地を乗っ取られる

他人になりすまして土地をだまし取る詐欺が東京を中心に続発中。犯人たちはどのような手口で犯行に及ぶのか? 偽の地権者を仕立てる手法から、印鑑証明を偽造するテクニックまで詳細に迫る。

地団太を踏む捜査員

〈死亡女性になりすまし無断で不動産売買 容疑の4人逮捕〉(日経新聞)
昨年11月30日、警視庁捜査2課の発表に基づき、小さな記事が新聞に掲載されたことがある。

逮捕された4人組は、地主が死亡し、何年も放置されていた東京都内の土地に目を付けた。パスポートや不動産売買契約書を偽造し、'12年4月に杉並区の不動産業者に物件を4700万円で売りつけた典型的な地面師詐欺である。

詐欺のスキームをつくった58歳の主犯を中心に、地主になりすました67歳の女、その世話係だった54歳の男、土地の買い手を探してきた50歳の男。4人は役割分担がきっちり決まっていた。犯行から4年後の摘発は、なりすまし犯の身柄を押さえられたことが大きい。

 

ところが逮捕から起訴まで22日の留置・勾留期限を迎えると、東京地検は不起訴処分を下し、彼らは無罪放免となってしまう。当然のごとく現場の捜査員たちは地団太を踏んだ。が、ことはそれだけでは済まない。

実はこの間、土地は被害者の不動産業者によって転売され、一軒家が建った。事件のことなどつゆほども知らないごく普通の家族が、そこに住んでいるのである。

通常、相続人のいないこうした土地は、財務省に物納される。つまり現在、真の所有者は国だから、住人は土地を借りていることになる。普通なら国に借地料を支払うか、あるいは改めて買い取らなければならない。

しかしそこに住む家族は土地代金を支払っている善意の第三者。そこをどう扱うのか。詐欺の事実が明らかなのに、手の打ちようがなく、そのまま放置されているようなのである。

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目下、都内で進行中の地面師詐欺の現場では、そんな混乱と矛盾が生じている。まるで土地の所有者が定まらない明治初期か終戦後に迷い込んだかのような事態だ。

複雑怪奇な地面師詐欺の捜査は、難航を極める。先週号で紹介した杉並区浜田山の駐車場などのように、捜査が成就した地面師詐欺のほうがむしろ珍しい。

取材に取り組んできた港区新橋駅前、世田谷区中町、渋谷区富ヶ谷、中野区中野弥生町、墨田区東向島における事件も、警視庁が捜査に着手している。だが、思うように進んでいない案件が少なくない。

たとえば中野弥生町の事件もそうだ。地下鉄丸ノ内線中野新橋の駅から5分ほど歩くと、その大地主の家がある。現地に行くと、広い敷地に、古ぼけたぼろぼろの民家が鎮座している。

敷地面積1709.3㎡、建物は'67年8月に改築された木造瓦葺2階建てで傷みは激しいが、延べ床面積は138.99㎡ある。立派な門の奥に広がる庭の樹木は伸び放題、荒れ寺のような風情だ。