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金融のプロが「トランプ相場」"株価"と"円"の動きを読み解く

大チャンスだけど大ピンチ!

金融のプロであるRPテック代表・倉都康行さんと、元日興アセットマネジメントファンドマネジャー・藤原敬之さんの2人が「トランプ相場」について大予測! 

倉都康行(くらつ・やすゆき)
55年生まれ。東京銀行、バンカース・トラスト、チェース証券会社東京代表を経てRPテックを設立。『地政学リスク』『金融史の真実』他

藤原敬之(ふじわら・のりゆき)
59年生まれ。クレディ・スイス信託銀行、日興アセットマネジメントなどを経て独立。作家・波多野聖として『メガバンク絶体絶命』を刊行

市場は「変化」を好む

藤原 トランプ氏が政策を実行に移し始め、国際政治は混乱しています。ですが、NYダウは2万ドル近辺、日経平均株価も1万9000円ほどの高値水準のままです。

倉都 株式市場の原動力である自由主義とグローバリゼーションを彼は否定しているにもかかわらず、株価は上がっていますね。とはいえ、この状況はそう長くは続かないと思うのですが。

藤原 私もそう思います。トランプ氏が公約で掲げた規制緩和やインフラ投資、法人税減税などを株式市場は「いいとこ取り」していますが、トランプ政権は本気で保護主義をやるつもりです。それを投資家たちも察知して、警戒を始めたのが今の市場の状態だと思います。

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倉都 目玉政策も効果のほどは未知数です。例えばトランプ氏は「ラストベルト(アメリカ中西部の工業地帯)の労働者を救う」、「アメリカに工場を作ってアメリカ人を雇え」と言いますが、アメリカは完全なサービス業の国なので、製造業なんてせいぜいGDPの10%か20%、労働者人口にして1500万人程度。

工場を2つ3つ作ったところで、経済にも雇用にも影響はほとんどないでしょう。

藤原 にもかかわらず株価が上がるのは、本質的に株式市場が変化を好むからですね。それも激しい変化であればあるほどいい。つまりトランプ氏は、市場が最も欲するキャラクターなわけです。

しかし、今のアメリカの主要企業は、グローバル経済を前提にロジスティックスも何もかも構築してしまっています。それを「全てアメリカ国内で作れ」とやってしまうと、例えばの話、iPhoneが今の4倍の値段になるかもしれない。

そのうえ「従業員のクビは切るな」とトランプ氏が言えば、企業はにっちもさっちもいかなくなる。今後数ヵ月から半年の間で、こういう混乱があっという間に起きるでしょう。

 

倉都 トランプ氏は不動産屋ですから、グローバルサプライチェーンなんて知らない。アメリカの自動車会社だって、中国で作った部品をメキシコで組み立てて、それを輸入して売っているわけです。それをすっ飛ばして、「中国とメキシコはけしからん」と言ってしまう。

藤原 でも、いくら説明しても聞く耳を持ちませんからね。失敗しても、その事実すら認めない。

彼にとっては目に見えるものが大事ですから、メキシコとの国境に壁を作るし、インフラを作り直して「トランプハイウェイ」にする。一方では法人税減税で税収は下がるし、財政出動で金利は上がる。いつか絶対に破綻するシナリオです。

怖いのは、今の株式市場が、異常な金融緩和の連続で、実体経済との乖離があまりに大きくなっていることです。いきなりマネーの世界がトランプ氏に牙を剥いたら、株価の動きは制御不能になってしまいます。投資家が「トランプ氏のせいでアップルが潰れるかもしれない」と感じた瞬間、暴落の可能性もある。