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企業・経営 週刊現代 日本 アメリカ
トヨタ、ANA、サントリー…有名企業トップが語る「トランプ対策」
「貿易摩擦時以上の恐ろしさ」

トップが動くしかない

「トヨタ名誉会長の豊田章一郎さんとは古い付き合いで、今年も年始の会でご一緒しました。その場にはスズキ会長の鈴木修さんなどもいて、まだトランプ氏が大統領に就任する前。『彼はいま過激なことを言っているけれど、実際に大統領になったらまともになるだろう』などと話していたものですが、現実は違った。

トランプ氏は1月20日に大統領に就任するや、大統領令を使って次々と信じられない決定を断行し、日本の自動車業界に対する攻撃も勢いが増しています。章一郎さんたちもいま頃、まさかこんなことになるとは、と思っていることでしょう」

 

そう語るのは、中小企業庁長官、伊藤忠商事副会長などを務めた中澤忠義氏である。
中澤氏は通産官僚時代に自動車課長や通商政策局長を務め、1970~'80年代の日米貿易摩擦時に担当者だった中心人物。その中澤氏から見て、トランプ大統領の言動は、「かつての貿易摩擦の時以上に恐ろしさを感じる」と言う。

「トランプ大統領の主張は、貿易摩擦時の米政府のそれと同じで、要するにアメリカの自動車をもっと買えということ。当時は日本政府としても交渉に苦労して、公用車としてアメリカ車を使ったり、輸出を自主規制するなど向こうを納得させるのに必死だった。

それに、ホンダ、日産、章一郎さんが率いるトヨタもアメリカに現地工場を作って、貢献をアピールしたものです。

そんな両国の貿易摩擦が落ち着くには何年もかかりましたが、最終的には中曽根、レーガンの日米両トップが、信頼関係を深められたのが大きかった。

翻って現在、安倍総理とトランプ大統領が信頼関係を結べるかは非常に不安です。トランプ大統領にはきちんと話をしても通用しない可能性があり、今後は予測不可能な状況になりかねない」

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当然、そうした事情は自動車メーカー各社のトップたちが最も痛感している。2月10日の安倍・トランプ会談で突きつけられる条件次第では経営問題に発展しかねないため、社内は「トランプ対策」に大慌て。中でも、名指しで口撃されたトヨタは気が気でなく、トップ自らが大きく動き出している。

トヨタ社員は言う。

「昨冬からアメリカではロビイストを使って、トヨタのアメリカ経済への貢献具合を『ご説明』してきましたが、今年に入ってからは豊田章男社長が前面に出ています。

トランプ大統領は『アメリカに雇用を作れ!』と求めているので、1月初旬にまず章男社長自らが今後5年間で100億ドル(約1兆1000億円)をアメリカに投資するとぶち上げたうえ、25日には米インディアナ工場で6億ドルの投資を行い、約400人を新規雇用するとアピールした。

この投資計画がインディアナ工場というのがポイントで、直近のインディアナ州知事は、トランプ政権で副大統領に就いたペンス氏。そのペンス氏のお膝元での『雇用増』をアピールすることで、トランプ大統領により強くPRしたい」