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エンタメ

聞かずに死んだら、もったいない!最高におもしろい落語家はこの人

なぎら健壱×堀井憲一郎が選んだ
なぎら健壱(なぎら・けんいち)
'52年東京都生まれ。フォーク歌手、タレントとしてマルチに活躍。落語をはじめ幅広い趣味を持つ。その巧みな語りはよく落語に例えられる

堀井憲一郎(ほりい・けんいちろう)
'58年京都府出身。コラムニスト。「落語は生で見てこそ」という信念で年間で数百回寄席・落語会に足を運ぶ。著書に『落語論』など

人間国宝を今のうちに見ておけ!

堀井 「いま見ておくべき」という視点から落語家を選ぶと、やっぱり(柳家)小三治師匠が筆頭。若手は当分見られるけれど、77歳の小三治師匠の場合は、そうはいかない。

なぎら アタシも同感。いま生きている人の中では小三治さんは一番好きな落語家の一人です。やっぱり上手いし聞かせる。

堀井 人間国宝が現役で、しかも寄席で普通に見られる。見に行かないともったいないですよね。

なぎら 亡くなった人まで含めていいのならば真っ先に古今亭志ん朝を推したい。

堀井 生前に、志ん朝師匠の「幾代餅」を生で聞いて、涙が止まらなくなったんです。落語で泣いたのは初めてで、「この人を追いかけなきゃ」と思ったんですが、間もなく亡くなってしまった。それから残っている音源を聞きまくりました。

なぎら 私は志ん朝の「船徳」を生で聞いたその週に、別の落語家がテレビで同じ噺をやっていたのを見て、こうも違うかと驚いたね。「長ぇな」と思っちゃったんだよ。志ん朝の芸には、客に退屈をみじんも感じさせない力がある。あの立川談志師匠も志ん朝を最期まで意識していた。

堀井 志ん朝師匠が亡くなって「談志師匠までいなくなったらマズい」と思って、そこからは談志師匠のライブをほぼすべて見たんです。師匠が60代半ばを超えて落ち着いたころで、素晴らしい高座に何度か出会えました。

なぎら '90年代の一時期、談志師匠にも良くない時期があったんだよね。「黄金餅」を見たんだけど、途中で地名をずっと言う場面でつっかえちゃう。最後は、「このへんでモノレールに乗るか」って飛ばして、お茶を濁していた。だけど、しばらくしたらまた「やっぱりこの人すげぇな」と思わせるようになって。

堀井 談志師匠に関しては、横須賀で聞いた「鼠穴」が衝撃的でした。蔵が燃えるシーンがあるんだけど、目の前で火柱がメラメラ上がっているような臨場感があった。もう、息を飲みました。

マイナーだけど大好きな噺家

なぎら いわゆる前座噺のような軽いものでも、あの人がやると「この噺ってこんなに聞かせたっけ?」と唸らされる。そういう腕があったね。何やっても上手い噺家って、談志師匠しかいないかもしれない。

堀井 談志師匠はその時々の世相を枕でどう取り上げるのかも楽しみでしたね。逆に、小三治師匠は時事ネタをいじらせたらダメ(笑)。談志師匠がコラムニストなら、小三治師匠はエッセイスト。海外旅行のエピソードとかこの石鹸がいいんだとか、身の回りの話がめちゃくちゃ面白い人です。

なぎら 志ん朝、談志師匠、小三治は別格として、バリバリの現役で「できるな」と思うのは柳家喬太郎。古典・新作両方に手を広げていて、どっちに目がいってるのか分からないところもあるけど。