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アメリカ 金融・投資・マーケット
自制なき暴君の下で、米国金融市場が安定を維持するための条件
高まる政策スタンスへの懸念

大統領就任以降、トランプ氏は数々の大統領令に署名し政策指示を出している。

大統領令とは、議会の承認を得ることなく、大統領が発する行政命令だ。これは、法律と同等の効力を持っている。

特に、1月27日に出されたシリアからの難民受け入れの一時停止、中東・アフリカの7ヵ国からの入国制限に関する大統領令は、国内外から大きな批判を招いている。

この大統領令は、宗教に関する差別や人権軽視など、米国の憲法に違反している可能性が高い。そのため、司法の観点から反対意見が出たのは当然だろう。

これに対して、トランプ大統領は入国制限に反対した司法長官代行を解任し、自らが正しいと言わんばかりに横暴な政治を進めている。

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徐々に、その政策スタンスへの懸念は高まっている。もし景気に息切れ感が出始めると、それなりのマグニチュードで株価などの調整が進むシナリオは排除できない。

抑えがきかない

正式な就任以降のトランプ大統領の政策を見ていると、保護主義政策、対外強硬姿勢がはっきりしている。冷静に考えると、米国が自国の利益だけを考えれば、他国の反発を招く可能性がある。

入国制限に関しては、永住権を持つ人までもが制限の対象に含まれていた(後に方針変更)。それに批判が出るのは当然だろう。権利は法的に認められたものである。それを無視する政権は、事実を冷静に理解せず、暴走していると言われても仕方ない。

現時点で分かったことは、トランプ政権には政策の内容、その影響を客観的に評価する機能が備わっていないことだ。

トランプ大統領は、これまでの主張を実行すれば人気は取れると考えている。そして、トランプ氏の側近には、縁故者や原理的な考えを持つ者が多い。それで大統領の横暴、暴言を制御するのは難しい。むしろ、「米国のためになることなら、何でもやればよい」という雰囲気の方が出やすい。

 

こうなると、トランプ政権に自制や、公平かつ実現可能な政策運営を期待することは難しい。社会全体がトランプ政権に“No”を突きつけない限り、先行きは不安だ。

足下では、共和党内部でもトランプ大統領の政策への評価が分かれている。ライアン下院議長は入国制限を擁護している。一方で、マケイン上院議員は大統領令を批判し、過激派組織への支持を高めることにつながると主張している。

加えて、マケイン上院議員はTPP離脱、メキシコからの輸入品に税金を課し、国境での壁建設に充てることも批判している。

それは、多様化を受け入れ、グローバル化を進めてきた米国にとって正しい意見だ。わが国等も、こうした正しい意見を、「正しい」と主張していくことが欠かせない。